転職を考えるとき、「年収がいくら変わるか」は気にしても、「手取りがいくら変わるか」まで計算している人は意外と少ないものです。年収アップでも、社会保険料・所得税・住民税が連動して増えるため、実感できる手取りの増加は小さくなることがあります。この記事では、転職前に把握しておきたいお金の変化を項目ごとに整理します。
手取りはどう変わる?年収だけでは見えない差
給与から差し引かれる主な控除は4種類です。
| 控除の種類 | 概要 | 2025年度の目安 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 協会けんぽの場合、都道府県別に料率が異なる。労使折半 | 月額標準報酬 × 都道府県別料率 ÷ 2(例:東京9.91%) |
| 厚生年金保険料 | 全国一律。労使折半 | 月額標準報酬 × 9.15%(上限650,000円) |
| 雇用保険料 | 2025年度より引き下げ | 年収 × 0.55%(令和7年度・一般事業) |
| 所得税 | 累進課税。給与所得控除・基礎控除・社会保険料控除後の課税所得に対して課税 | 課税所得 × 5〜45%(+ 復興特別所得税2.1%) |
| 住民税 | 前年の収入に基づいて翌年課税。退職後も支払いが続く | 課税所得 × 10% + 均等割5,000円/年 |
出典:国税庁、協会けんぽ(2025年度)、厚生労働省
試算例:年収400万円 → 450万円(東京・単身・30代)
- 年収差:50万円アップ
- 手取り増加の目安:約30〜33万円程度
- 差の理由:増額分に対して所得税・社会保険料が連動して増えるため
※ 各種控除・年末調整・扶養状況によって異なります。ツールで自分の数値を確認してみてください。
2025年の変更点:基礎控除が改定されました
令和7年(2025年)12月1日以降の申告分から、基礎控除が所得に連動する方式に変わりました。合計所得655万円以下の方は、現行の48万円から58万円(または68万円・63万円)に増額される可能性があります。転職年の確定申告はこの改定を含めて計算されます。
出典:国税庁「基礎控除」(2025年12月1日改定)
退職後の空白期間:健康保険・年金・住民税の3つに注意
① 健康保険:「任意継続」か「国民健康保険」かを選ぶ
会社を退職すると、健康保険は自分で加入し直す必要があります。選択肢は主に2つです。
| 種類 | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 任意継続 | 退職後も最長2年、元の健保に加入し続ける。退職日の翌日から20日以内に手続き | 保険証が同じ・手続きが比較的シンプル | 事業主負担がなくなり保険料が約2倍になる。標準報酬月額の上限は32万円(2025年4月〜) |
| 国民健康保険 | 市区町村が運営。退職日の翌日から14日以内に手続き | 前年収入が低ければ保険料が安くなる場合がある・軽減制度あり | 自治体によって保険料が大きく異なる・家族の人数も料金に影響 |
どちらが安いかは、前年の収入・居住地・家族構成によって変わります。退職前に両方の概算を比較することをお勧めします。
② 国民年金:月17,510円の支払いが続く(2025年度)
会社員のうちは厚生年金に加入していますが、退職すると国民年金(第1号被保険者)に切り替わります。2025年度(令和7年度)の国民年金保険料は月額17,510円です(前年比530円増)。空白期間が3ヶ月なら計52,530円の出費となります。
2024年度:16,980円/月 → 2025年度:17,510円/月 → 2026年度(予定):17,920円/月
出典:日本年金機構(令和7年度)
③ 住民税の「時差」問題:退職後も前年分の支払いが続く
住民税の主なポイントをまとめます。
退職月によって住民税の扱いが変わります
- 1〜4月退職:残りの住民税が退職月の給与・退職金から一括徴収される
- 5月退職:その月分で年度終了のため実質影響なし
- 6〜12月退職:申し出がない限り普通徴収(納付書)に切り替わり、年4回に分けて支払う
出典:総務省「個人住民税について」
転職後の会社に就職した翌年は、前年(転職した年)の収入分の住民税が給与から特別徴収されます。年収が上がった年の翌年は住民税が増えることも把握しておきましょう。
失業給付はもらえる?2025年4月から給付制限が短縮
雇用保険 基本手当のポイント(2025年4月〜)
- 給付制限(自己都合退職):原則1ヶ月(2025年4月1日以降・旧:2ヶ月)
- 例外:5年間で2回以上の自己都合離職は3ヶ月
- 待機期間:7日間(ハローワーク登録後・すべての退職に共通)
- 給付日数の目安(一般・自己都合):被保険者期間10年未満→90日 / 10年以上20年未満→120日 / 20年以上→150日
- 基本手当日額の上限(2025年8月〜):30歳未満7,255円 / 30〜45歳未満8,055円 / 45〜60歳未満8,870円
出典:厚生労働省(2025年4月施行・雇用保険法等の一部を改正する法律)
ただし、転職先が決まっている場合や、入社まで期間が短い場合は給付を受けられないことがあります。また次の就職で雇用保険に加入すれば、残日数が引き継がれる場合があります。
退職金がある場合:退職所得控除で税負担を大幅に軽減できる
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 具体例 |
|---|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) | 勤続7年 → 280万円 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) | 勤続30年 → 1,500万円 |
退職所得の計算式は「(退職金 − 退職所得控除)× 1/2」です。控除額以内の退職金なら税金がゼロになる場合もあります。
なお、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出しておくことで、適切な源泉徴収が行われます。未提出の場合は一律20.42%が源泉徴収され、後日確定申告が必要になることがあります。
出典:国税庁「退職金と税」
転職前後の手取りをツールで試算する
転職前に確認しておきたい5つのチェックポイント
転職は「年収の変化」だけでなく、複数のお金の変化が同時に起きるイベントです。事前に把握しておくことで、焦らず準備ができます。
転職前の確認リスト
- 手取りの変化をシミュレーターで試算する(社保・税込みで計算)
- 空白期間中の健康保険を選ぶ(任意継続 vs 国民健康保険の比較)
- 住民税の残額を確認する(退職月・普通徴収への切り替え)
- 失業給付の受給可否を確認する(給付制限1ヶ月・給付日数)
- 退職金がある場合は退職所得申告書を提出する
あわせて使ってみる
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・サービスへの投資を推奨するものではありません。税制・社会保険制度は法改正によって変更される場合があります。正確な情報は国税庁・日本年金機構・協会けんぽ・ハローワークでご確認ください。最終的な判断はご自身でお願いします。


コメント