※本記事は2026年8月時点の情報です。分離課税への移行は法律の骨格が定まった段階で、適用開始時期や対象範囲はまだ確定していません(今後の政省令で明確化)。投資判断はご自身の責任でお願いします。
まず結論:3行でわかる要点
- 暗号資産の利益は総合課税(最大約55%)から申告分離課税20.315%へ移行する見込み
- 適用は2028年1月以降が有力だが、開始時期はまだ確定していない
- 全員が得をするわけではない。所得が低い人は分離課税のほうが不利になることがある
暗号資産(仮想通貨)の利益にかかる税金が、大きく変わろうとしています。株式や投資信託と同じ20.315%の申告分離課税になる方向です。
ただし「いつから」「何が対象か」は、報道されているほど単純ではありません。順番に整理します。
何がどう変わるのか
| 項目 | 現在 | 改正後 |
|---|---|---|
| 課税方式 | 雑所得として総合課税 | 申告分離課税 |
| 税率 | 給与などと合算した累進課税で最大約55%(所得税最高45%+住民税10%) | 一律20.315% |
| 損失の繰越 | できない | 3年間繰り越せる |
| 損益通算 | 雑所得の中でのみ | 「特定暗号資産の現物取引」の中でのみ。株式やFXとは通算できない |
20.315%の内訳は、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%です。株式や投資信託の利益にかかる税率とまったく同じで、これまで不利だった暗号資産の扱いが揃えられる形になります。
いつから始まる?「2028年1月」はまだ確定ではない
ここが誤解されやすい点です。法律の整備は次のように進んでいます。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年3月31日 | 改正所得税法が成立・公布。分離課税の骨格が所得税法に組み込まれた |
| 2026年7月15日 | 前提となる金融商品取引法・資金決済法の改正法が成立 |
| 今後 | 金商法等の改正が施行された翌年の1月1日以後の譲渡から分離課税を適用 |
対象になる取引・ならない取引
ここが最も注意が必要なところです。すべての暗号資産の利益が20.315%になるわけではありません。
| 取引・収入 | 改正後の扱い(見込み) |
|---|---|
| 「特定暗号資産」の現物取引 | 分離課税20.315% |
| 同デリバティブ取引・ETF | 分離課税20.315% |
| 海外取引所での取引 | 総合課税のまま |
| DEX(分散型取引所)・個人間取引 | 総合課税のまま |
| マイニング・ステーキングの報酬 | 総合課税のまま |
なお、どの銘柄が「特定暗号資産」に含まれるかは今後の政省令で明確化される予定で、現時点では確定していません。
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給与の年収と暗号資産の利益を入れるだけで、いま売った場合と改正後に売った場合の税額を比べられます。
「待てば得」とは限らない ── 損益分岐は年収で決まる
分離課税は一律20.315%です。ということは、いまの総合課税での実効税率が20.315%より低い人にとっては、むしろ増税になります。
試算すると、たとえば次のようになります(給与所得控除・基礎控除・社会保険料を概算で織り込んだ目安)。
| 給与年収 | 利益 | いま売る (総合課税) |
改正後 (20.315%) |
差 |
|---|---|---|---|---|
| なし | 300万円 | 約35.8万円 | 約60.9万円 | 待つと約25万円増 |
| 300万円 | 100万円 | 約15.1万円 | 約20.3万円 | 待つと約5万円増 |
| 500万円 | 300万円 | 約83.7万円 | 約60.9万円 | 待つと約23万円減 |
| 1,200万円 | 2,000万円 | 約955万円 | 約406万円 | 待つと約549万円減 |
つまり利益が大きい人・所得が高い人ほど分離課税の恩恵が大きく、所得が低い人には逆風になります。「税率が下がる」という見出しだけで判断しないことが大切です。
それでも「税率だけ」で決めないほうがいい理由
- 開始時期が確定していない:待つ期間がどれだけ延びるか読めません
- 価格が動く:待っている間に価格が2割下がれば、税率差より損失のほうが大きくなります
- 含み損は持ち越せない見込み:いま抱えている含み損を、新制度の利益と相殺することはできないとされています
- 対象外の取引がある:海外取引所などを使っていると、待っても分離課税にならない可能性があります
まとめ
- 暗号資産の利益は総合課税(最大約55%)→申告分離課税20.315%へ移行する見込み
- 損失は3年繰越が可能に。ただし株式やFXとの損益通算はできない
- 適用は2028年1月以降が有力だが未確定。施行日は政令で決まる
- 海外取引所・DEX・マイニング報酬などは対象外で総合課税のまま
- 所得が低い人は分離課税のほうが不利。自分の数字で確かめることが大切
あわせて使ってみたいツール
- 税額の差を試算する → 暗号資産の税金 比較シミュレーター
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よくある質問(FAQ)
Q. 暗号資産の分離課税はいつから始まりますか?
A. まだ確定していません。分離課税は「金融商品取引法等の改正が施行された翌年の1月1日以後の譲渡」から適用されます。金商法・資金決済法の改正法は2026年7月15日に成立しましたが、施行日は政令で定められるためです。2027年中に施行されれば2028年1月開始となり、現時点ではこの見込みが有力とされています。
Q. 暗号資産の税率は具体的に何%になりますか?
A. 20.315%です。内訳は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%で、株式や投資信託の利益にかかる税率と同じです。現在は雑所得として給与などと合算する総合課税のため、所得税の最高45%と住民税10%を合わせて最大約55%の税率がかかる場合があります。
Q. すべての暗号資産取引が20.315%になりますか?
A. いいえ。対象は「特定暗号資産」の現物取引やデリバティブ取引、ETFに限られる見込みです。海外取引所での取引、DEX(分散型取引所)や個人間の取引、マイニングやステーキングで得た報酬は、改正後も総合課税のままとされています。どの銘柄が「特定暗号資産」に含まれるかは今後の政省令で明確化される予定です。
Q. 損失は繰り越せるようになりますか?株式と相殺できますか?
A. 改正後は損失を3年間繰り越せるようになります。ただし損益通算できるのは「特定暗号資産の現物取引」の中に限られ、上場株式等やFXの利益と相殺することはできません。また、移行前に抱えている含み損を新制度の利益に持ち越すことはできない見込みです。
Q. 分離課税になるまで売却を待ったほうが得ですか?
A. 人によります。分離課税は一律20.315%のため、いまの総合課税での実効税率が20.315%を下回る人にとっては、むしろ税負担が増えます。目安として給与年収が低く利益も小さい場合は、現行の総合課税のほうが有利になることがあります。加えて開始時期が未確定であること、待つ間に価格が変動すること、海外取引所などは対象外であることも踏まえて判断する必要があります。
参考・出典
- 国税庁:暗号資産に関する税務上の取扱い
- 金融庁(金融商品取引法・資金決済法の改正)
- 財務省:税制
本記事は情報提供を目的とした一般的な解説であり、特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。制度は今後の政省令で内容が固まります。実際の税務判断は最新の公表内容をご確認のうえ、必要に応じて税理士など専門家にご相談ください。

