※本記事は2026年9月時点の情報です。金額や区分は制度改定で変わることがあるため、最新の数字は記事末尾の公的機関リンクからご確認ください。実際の判定はお住まいの市区町村が行います。
まず結論:3行でわかる要点
- 介護サービスの自己負担には月ごとの上限がある。多くの世帯は44,400円で止まる
- ただし申請しないと支給されない。食費・居住費・福祉用具の購入費は対象外
- 医療費もかさんだ年は、1年分をまとめて合算する制度が別にある
親の介護が始まると、毎月の請求額が読めない時期があります。デイサービスを増やした月、ショートステイを使った月。明細を見て「これが毎月続くのか」と不安になる。
介護保険には、1か月の自己負担が一定額を超えたら、超えた分が戻ってくる仕組みがあります。高額療養費の介護版にあたる制度です。
ただ、医療費の高額療養費ほど知られていません。しかも自分から市区町村に申請しないと支給されない制度です。この記事では、上限額がいくらなのか、何が対象で何が対象外なのかを整理します。
介護保険の自己負担は1〜3割。でも上限がある
介護保険サービスを使ったときの自己負担は、かかった費用の1割です。一定以上の所得がある人は2割または3割になります。1万円分のサービスなら1,000円(2割なら2,000円)という計算です。
この自己負担が積み上がって、1か月の合計が上限額を超えた場合、超えた分が介護保険から支給されます。これが高額介護サービス費です。
高額療養費との違い
医療費の高額療養費は、病院の窓口で「限度額適用認定証」やマイナ保険証を出せば、その場で上限までの支払いに抑えられます。
一方の高額介護サービス費は、いったん自己負担を全額払ってから、あとで超過分が振り込まれるのが基本です。毎月の請求額そのものが下がるわけではない点は、知っておいたほうがいいところです。
上限額は所得によって5段階
厚生労働省が示している区分と上限額は次のとおりです。「世帯」は住民基本台帳上の世帯員のうち、介護サービスを利用した人全員の負担の合計に対する上限、「個人」は本人だけの上限を指します。
| 区分 | 対象になる人 | 上限額(月額) |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護を受給している方等 市町村民税世帯非課税の老齢福祉年金受給者 |
15,000円(個人) 24,600円(世帯)/15,000円(個人) |
| 第2段階 | 市町村民税世帯非課税で、公的年金等収入金額+その他の合計所得金額が80.9万円以下 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
| 第3段階 | 市町村民税世帯非課税で、第1・第2段階に当てはまらない方 | 24,600円(世帯) |
| 第4段階① | 市区町村民税課税世帯〜課税所得380万円(年収約770万円)未満 ※いちばん多い区分 |
44,400円(世帯) |
| 第4段階② | 課税所得380万円(年収約770万円)〜690万円(年収約1,160万円)未満 | 93,000円(世帯) |
| 第4段階③ | 課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 140,100円(世帯) |
※第4段階の課税所得による判定は、同一世帯内の65歳以上の方の課税所得によって行われます。
多くの家庭が当てはまるのは第4段階①の44,400円です。冒頭の「今月6万円を超えた」というケースなら、条件が合えば差額が戻る可能性があります。
ここは対象にならない、という費用がある
ここが誤解しやすいところです。介護にかかったお金がすべて合算されるわけではありません。厚生労働省は、高額介護サービス費の対象を「月々の利用者負担額(福祉用具購入費や食費・居住費等一部を除く)の合計額」と説明しています。
対象外になる主なもの
・食費・居住費(施設やショートステイで発生する分)
・福祉用具の購入費
・日常生活費(施設が独自に設定する分)
・支給限度額を超えて使った分(下記参照)
つまり施設に入っている場合、請求額のうち高額介護サービス費の対象になるのは「施設サービス費の1〜3割」の部分が中心です。
支給限度額を超えた分は全額自己負担
在宅で介護サービスを使う場合、要介護度ごとに1か月に使えるサービス量の上限(支給限度額)が決まっています。この範囲内なら1〜3割負担ですが、超えた分は全額が自己負担になります。
| 要介護度 | 1か月の支給限度額 | 1割負担なら |
|---|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 | 約5,032円 |
| 要支援2 | 105,310円 | 約10,531円 |
| 要介護1 | 167,650円 | 約16,765円 |
| 要介護2 | 197,050円 | 約19,705円 |
| 要介護3 | 270,480円 | 約27,048円 |
| 要介護4 | 309,380円 | 約30,938円 |
| 要介護5 | 362,170円 | 約36,217円 |
要介護1で1割負担なら、限度額いっぱいに使っても自己負担は約16,765円。上限の44,400円には届きません。高額介護サービス費が実際に効いてくるのは、2割・3割負担の人、要介護度が重い人、世帯に利用者が2人いる場合などです。
申請しないと支給されない
厚生労働省の説明にも「支給を受けるためには、市区町村に申請することが必要です」と明記されています。使っていれば自動的に振り込まれる制度ではありません。
実務としては、対象になった月があると市区町村から申請書が届くことが多く、一度申請すれば以降は同じ口座に自動で振り込まれるという運用をしている自治体が一般的です。ただし取り扱いは自治体によって違うので、届いた書類は放置せず出しておくのが確実です。
確認しておきたいこと
・親あての郵便物に、市区町村からの「高額介護サービス費支給申請書」が紛れていないか
・振込先口座が、いま使っている口座になっているか
・親と世帯を分けている/同じにしている状態が、判定にどう影響するか
迷ったら、担当のケアマネジャーか市区町村の介護保険担当窓口が確認先になります。
医療費もかさんだ年は、1年分を合算できる
介護と医療が同時に重なる年があります。入退院を繰り返しながら在宅介護を続けている場合などです。
このときは、高額医療・高額介護合算制度が使えます。1年間(8月1日〜翌年7月31日)の医療保険と介護保険の自己負担を合算し、限度額を500円以上超えた分が支給される仕組みです。申請先は医療保険者です。
| 所得の区分 | 75歳以上 70〜74歳 |
70歳未満 |
|---|---|---|
| 年収約1,160万円〜 | 212万円 | 212万円 |
| 年収約770万〜約1,160万円 | 141万円 | 141万円 |
| 年収約370万〜約770万円 | 67万円 | 67万円 |
| 〜年収約370万円 | 56万円 | 60万円 |
| 市町村民税世帯非課税等 | 31万円 | 34万円 |
| 市町村民税世帯非課税かつ 年金収入80.9万円以下等 |
本人のみ19万円 介護利用者が複数31万円 |
34万円 |
年額なので実感しにくいのですが、世帯非課税で年金収入が少ない親なら、医療と介護を合わせて年19万円が上限ということになります。1年で数十万円かかっているなら、確認する価値があります。
施設に入るなら「補足給付」も別にある
施設に入所すると、サービス費の1〜3割に加えて居住費・食費・日常生活費がかかります。厚生労働省が示す目安は次のとおりです。
| 特別養護老人ホーム・要介護5の1か月 | 多床室 | ユニット型個室 |
|---|---|---|
| 施設サービス費の1割 | 約26,130円 | 約28,650円 |
| 居住費 | 約27,450円 (915円/日) |
約61,980円 (2,066円/日) |
| 食費 | 約43,350円 (1,445円/日) |
約43,350円 |
| 日常生活費 | 約10,000円 | 約10,000円 |
| 合計 | 約106,930円 | 約143,980円 |
このうち居住費と食費は、高額介護サービス費の対象になりません。そのかわり、所得や資産が一定以下の人には特定入所者介護サービス費(補足給付)という別の仕組みがあり、負担限度額を超えた居住費・食費が介護保険から支給されます。
補足給付は「預貯金」も見られる
高額介護サービス費と違い、補足給付には預貯金額の要件があります。たとえば第2段階(世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入+その他の合計所得が80.9万円以下)は、単身で650万円・夫婦で1,650万円が上限です。
こちらも負担限度額認定の申請が必要で、市区町村に自分から出します。
補足給付が認定されると、特別養護老人ホームの食費は基準1,445円/日が第1段階300円・第2段階390円・第3段階①650円・第3段階②1,360円まで下がります。居住費も多床室なら基準915円/日が第1段階0円・第2〜第3段階430円になります。月に数万円単位で変わる部分です。
順番としては、こうなる
- まず親の世帯が市町村民税課税か非課税かを確認する。上限額がここで大きく変わる
- 毎月の請求のうち、施設サービス費・在宅サービス費の部分がいくらかを見る(食費・居住費は別枠)
- 上限を超えた月があれば、市区町村に高額介護サービス費を申請する
- 施設入所なら、あわせて負担限度額認定が使えないか確認する
- 医療費も重なった年は、翌年に合算制度を医療保険者へ申請する
モリガマがちょうどいいものを持ってきてくれました。

この制度は「世帯が市町村民税非課税かどうか」で上限が44,400円から24,600円へ変わります。親の世帯が非課税に当てはまるかどうかは、年収と家族構成から概算で確認できます。
まとめ
- 介護サービスの自己負担には月ごとの上限がある(高額介護サービス費)
- いちばん多い区分は44,400円(世帯)。市町村民税世帯非課税なら24,600円まで下がる
- 課税所得380万円以上は93,000円、690万円以上は140,100円と上がる
- 食費・居住費・福祉用具の購入費は対象外。支給限度額を超えて使った分も全額自己負担
- 市区町村への申請が必要。使っていれば自動で戻る制度ではない
- 医療費も重なった年は、8月〜翌7月の1年分を合算する制度がある(申請先は医療保険者)
- 施設入所なら、居住費・食費が下がる補足給付が別にある。こちらは預貯金の要件つき
よくある質問(FAQ)
Q. 高額介護サービス費の上限額はいくらですか?
A. 所得によって5段階に分かれます。市区町村民税課税世帯で課税所得380万円未満なら44,400円(世帯)、課税所得380万〜690万円未満は93,000円、690万円以上は140,100円です。市町村民税世帯非課税なら24,600円(世帯)、生活保護受給者等は15,000円(個人)になります。
Q. 申請しなくても自動で振り込まれますか?
A. いいえ。厚生労働省は「支給を受けるためには、市区町村に申請することが必要です」としています。実務では対象月があると市区町村から申請書が届き、一度申請すれば以降は同じ口座に振り込まれる運用が一般的ですが、取り扱いは自治体によって異なります。届いた書類は出しておくのが確実です。
Q. 施設の食費や部屋代も上限の計算に入りますか?
A. 入りません。高額介護サービス費の対象は月々の利用者負担額のうち、福祉用具購入費や食費・居住費等を除いた部分です。そのかわり所得や資産が一定以下の人には、居住費と食費が下がる特定入所者介護サービス費(補足給付)という別の制度があります。こちらも市区町村への申請が必要です。
Q. 医療費と介護費を合わせて計算できる制度はありますか?
A. 高額医療・高額介護合算制度があります。8月1日から翌年7月31日までの1年間の医療保険と介護保険の自己負担を合算し、限度額を500円以上超えた場合に、医療保険者に申請すると超えた分が支給されます。市町村民税世帯非課税で年金収入80.9万円以下等なら、本人のみの場合の限度額は年19万円です。
Q. 要介護1で1割負担なら、高額介護サービス費は使えますか?
A. 使える場面は限られます。要介護1の支給限度額は167,650円で、1割負担なら約16,765円。上限の44,400円には届きません。実際に効いてくるのは2割・3割負担の人、要介護度が重い人、同じ世帯に介護サービスの利用者が2人いる場合などです。
参考・出典
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム:サービスにかかる利用料」 — 高額介護サービス費の区分と上限額、高額医療・高額介護合算制度の限度額、支給限度額、補足給付
- 厚生労働省「介護・高齢者福祉」 — 介護保険制度の全体像
※実際の判定と支給はお住まいの市区町村が行います。世帯の考え方や必要書類は自治体によって異なるため、申請前に介護保険担当窓口またはケアマネジャーにご確認ください。

