※本記事は2026年8月時点の情報です。制度の適用や手続きは、勤め先の就業規則やハローワークの判断により異なる場合があります。
まず結論:3行でわかる要点
- 介護を理由に辞める人は年10万6,000人。しかも増えている
- 使える制度は介護休業だけではない。働き方を変える制度が6つある
- 2025年4月から、会社には制度を知らせる義務ができた。聞いていい
親の介護が始まったとき、頭をよぎるのが「仕事を続けられるだろうか」という不安です。
総務省の令和4年就業構造基本調査によると、直近1年間に介護・看護を理由に離職した人は10万6,000人。前回の2017年調査から7,000人増えています。減っていません。
この記事では、辞めるという判断をする前に知っておきたいことを整理します。
辞めるとお金はどう変わるか
感情の話をする前に、数字を並べておきます。
| 変わること | 内容 |
|---|---|
| 収入 | 給与がなくなる。介護休業給付金も受け取れない |
| 健康保険 | 任意継続(元の健康保険を続ける)・国保(国民健康保険)・家族の扶養(家族の健康保険に入る)から選ぶ。保険料は自己負担が増える |
| 年金 | 厚生年金から抜ける。その期間は、厚生年金の上乗せ分が増えない |
| 再就職 | 介護が続いている間は時間の制約が残る。元の条件に戻るとは限らない |
いちばん効いてくるのが最後の行です。介護はいつまで続くか見通しにくく、退職すると仕事をしていない期間が長くなることもあります。介護が落ち着いたときに、辞める前と同じ収入の仕事に戻れるとは限りません。
辞めることが間違いだと言いたいのではありません。辞めるという選択が、いちばん元に戻しにくいという性質を持っている、ということです。だから先に他の手を確かめておく価値があります。
介護休業のあとに使える制度
介護休業(通算93日)のほかにも、働き方を変える制度があります。残業や深夜勤務の制限は、介護が続く間、繰り返し請求できます。短時間勤務などは、利用開始から3年以上の期間に2回以上使えるよう、会社が用意することになっています。
| 制度 | できること |
|---|---|
| 介護休暇 | 1年に5日(対象家族2人以上なら10日)。1日単位・時間単位で取れる |
| 所定外労働の制限 | 残業を免除してもらえる |
| 時間外労働の制限 | 残業時間に上限を設けてもらえる |
| 深夜業の制限 | 夜10時から朝5時の勤務を免除してもらえる |
| 短時間勤務等の措置 | 勤務時間の短縮やフレックスなど。利用開始から3年以上の期間に2回以上 |
| 介護のためのテレワーク | 2025年4月から会社の努力義務(実施に努めることが求められる)になった |
「残業を免除してもらう」だけで続けられるケースは、実際にあります。辞めるか続けるかの二択ではありません。その間に段階があります。

2025年4月から、会社に義務ができた
制度があっても、知らなければ使えません。そこで法律が変わりました。育児・介護休業法の改正で、2025年4月から会社に次のことが義務づけられています。
① 介護に直面したと申し出た人への個別の周知と意向確認
介護が必要になったと会社に伝えた人に対して、事業主は介護休業制度などを個別に知らせ、利用する意向があるかを確認しなければなりません。伝えれば、説明を受けられる立場にあります。
② 介護に直面する前の早い段階での情報提供
40歳などの段階で、介護休業や両立支援制度の情報を提供することが義務になりました。介護が始まってから慌てるのではなく、その前に知っておいてもらうための措置です。
③ 制度を使いやすくする環境の整備
研修の実施、相談窓口の設置、事例の収集と提供、方針の周知のいずれかを講じることが義務です。相談窓口が設けられている会社なら、そこに聞けます。
それでも辞めるときに、知っておきたいこと
制度を使っても続けられない状況はあります。そのときのために、ひとつだけ。
介護を理由に自己都合で退職した場合、ハローワークで特定理由離職者(やむを得ない理由で退職した人)と認定されることがあります。認定されると、通常の自己都合退職につく給付制限(失業給付を受け取れない期間)がなくなります。だれにでもある7日間の待期(申し込み後に待つ期間)のあと、失業給付が始まります。
認定には書類がいる
介護申立書や家族の診断書など、状況を示す書類の提出を求められます。第三者による証明があるかどうかが判断の分かれ目になります。退職を決める前に、必要な書類をハローワークで確認しておくと手戻りがありません。
退職後の健康保険は任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3択になります。どれが有利かは前年の所得によって変わるので、退職後の健康保険の記事で確認してください。
辞める前に確かめる5つのこと
- 要介護認定(介護がどのくらい必要かの判定)は申請したか。サービスが使えるかどうかで負担がまったく変わります
- ケアマネジャー(介護サービスの利用を支える専門職)に相談したか。仕事を続ける前提でケアプラン(介護サービスの利用計画)を組めないか聞いてみる価値があります
- 会社に伝えたか。伝えれば、制度の説明を受けられる立場になります
- 残業免除や短時間勤務で足りないか。辞めずに済む段階があるかもしれません
- 介護休業の93日をまだ使っていないか。3回に分けて使えます
判断に迷うときは、この5つを確認すると検討の材料を整理できます。制度を使っても仕事を続けるのが難しい場合は、退職後の生活も含めて考えます。
モリガマがちょうどいいものを持ってきてくれました。

介護にかかるお金の全体像を先に見ておくと、判断の材料が増えます。
まとめ
- 介護・看護を理由に離職した人は年10万6,000人。5年で7,000人増えた
- 辞めるという選択は、いちばん元に戻しにくい
- 介護休業のあとにも、残業免除・短時間勤務など、働き方を変える制度がある
- 2025年4月から、会社には個別の周知と意向確認が義務づけられた
- 個別の周知は申し出た人が対象。伝えると説明を受けられる
- 辞める場合、介護が理由なら特定理由離職者として給付制限がつかないことがある
よくある質問(FAQ)
Q. 介護を理由に辞める人はどれくらいいますか?
A. 総務省の令和4年就業構造基本調査によると、直近1年間に介護・看護を理由に離職した人は10万6,000人です。前回の2017年調査から7,000人増加しており、減少していません。
Q. 介護休業の93日を使い切ったら、あとは辞めるしかないのですか?
A. そうとは限りません。介護休暇、所定外労働の制限(残業の免除)、時間外労働の制限、深夜業の制限、短時間勤務等の措置、介護のためのテレワークといった制度があります。残業や深夜勤務の制限は、介護が続く間、繰り返し請求できます。働き方を変えることで続けられるケースがあります。
Q. 会社に介護のことを伝えないと制度は使えませんか?
A. 実質的に伝える必要があります。2025年4月から、介護に直面した旨を申し出た労働者に対して、事業主が介護休業制度等を個別に周知し利用の意向を確認することが義務づけられました。この義務は申し出た人に対するものなので、伝えることで説明を受けられる立場になります。
Q. 介護で辞めた場合、失業給付はすぐもらえますか?
A. ハローワークで特定理由離職者と認定されれば、通常の自己都合退職につく給付制限がなくなり、7日間の待期期間のあとに給付が始まります。認定には介護申立書や家族の診断書など、状況を示す書類が必要です。第三者による証明があるかどうかが判断の分かれ目になるため、退職を決める前にハローワークで必要書類を確認しておくと安心です。
Q. 辞める前に何を確認すればいいですか?
A. 要介護認定を申請したか、ケアマネジャーに仕事を続ける前提で相談したか、会社に伝えたか、残業免除や短時間勤務で対応できないか、介護休業の93日をまだ使っていないか、の5点です。これらを確かめたうえでの判断であれば納得感が違います。
参考・出典
本記事は情報提供を目的とした一般的な解説です。制度の適用範囲や手続きは勤め先の就業規則により異なる場合があり、特定理由離職者の認定はハローワークの判断によります。実際の利用にあたっては勤め先、最寄りのハローワーク、地域包括支援センターにご相談ください。


