国民年金の保険料には、払えないときのための制度があります。
- 免除:保険料の全部または一部を払わなくてよい
- 猶予(学生納付特例・納付猶予):保険料の支払いを待ってもらう
これらを利用した期間は、年金を受け取る資格の期間(受給資格期間)には数えられますが、追納しなければ将来の年金額が減ってしまいます。
この記事では、追納の仕組みや免除種類ごとの違いを整理し、追納を検討するときに押さえておきたいポイントを解説します。
年金の追納とは ― 免除・猶予期間の保険料を後から納めること
追納とは、国民年金の保険料の免除・納付猶予・学生納付特例の承認を受けた期間について、後から保険料を納付することです。追納することで、老齢基礎年金(国民年金から老後に受け取る年金)の受給額を満額に近づけることができます。
・追納できるのは免除・猶予の承認を受けた期間のみ(未納期間は不可)
・追納できるのは追納を申し込む月の前10年以内の期間
・3年度目以降の追納には、経過した期間に応じた追加の支払い(加算額)が必要になる
・追納は古い月から順番に行う必要がある
※未納期間は追納の対象外です。未納と免除・猶予は制度上の扱いが異なり、受給資格期間への算入や障害年金・遺族年金の受給要件にも影響します。自分の年金記録は「ねんきんネット」で確認できます。
免除の種類で年金への反映が異なる
免除・猶予の種類によって、追納しなかった場合の年金への反映割合と、追納に必要な額が異なります。2009年4月以降の期間については以下のとおりです。表の割合は、その期間の保険料を全額納めた場合を100%として比べています。
| 免除の種類 | 追納しない場合の反映 | 追納で増える分 | 追納額の目安(1ヶ月) |
|---|---|---|---|
| 学生納付特例 | 0%(反映なし) | +100%分 | 約17,510円 |
| 納付猶予 | 0%(反映なし) | +100%分 | 約17,510円 |
| 全額免除 | 50%(半額反映) | +50%分 | 約17,510円 |
| 3/4免除 | 62.5% | +37.5%分 | 約13,130円 |
| 半額免除 | 75% | +25%分 | 約8,760円 |
| 1/4免除 | 87.5% | +12.5%分 | 約4,380円 |
- 表の金額の前提:追納額は、免除や猶予を受けた年度の保険料が基準です。表は2025年度(月17,510円)の期間を追納する場合の目安です。2024年度の期間なら月16,980円が基準です。
- 加算額:免除を受けた年度の翌年度から数えて3年度目以降の追納には、加算額が上乗せされます。
- 2009年3月以前の期間:国の負担の割合が異なるため、反映割合も異なります。
追納のメリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 老齢基礎年金の受給額が増える(終身) | まとまった資金が必要(24ヶ月で約41万円) |
| 追納額の全額が社会保険料控除(払った保険料を所得から差し引ける仕組み)の対象 | 受取総額が追納額を上回るまでに約10年かかる |
| 年金は物価・賃金にスライドし、インフレにある程度対応 | 年金制度改定により受給額が将来変動する可能性 |
| 障害年金・遺族年金の受給要件にも関係 | 同じ金額を投資に回す選択肢もある |
追納は「一生受け取る年金を増やす」こと、投資は「自分で資産を運用する」ことです。長生きリスク(長生きして生活費が足りなくなるリスク)への備えとしては年金に強みがあり、流動性(必要なときにお金に換えやすいこと)や運用益(運用で得られる利益)では投資に強みがあります。
具体例 ― 学生納付特例24ヶ月の場合
学生納付特例を利用した人の例を見てみましょう。
・卒業・就職:2026年3月に大学を卒業して就職
・年収:400万円
・対象期間:在学中の2年間(2024・2025年度)
・免除種類:学生納付特例(追納しないと年金反映0%)
・月数:24ヶ月
・追納額:16,980円 × 12ヶ月 + 17,510円 × 12ヶ月 = 413,880円
・追納時期:2026年度にまとめて追納(免除を受けた年度の翌年度から2年度以内なので加算額なし)
| 金額 | 備考 | |
|---|---|---|
| 追納総額 | 413,880円 | 2年以内なので加算なし |
| 年金増額(年額・概算) | 約42,365円/年 | 終身で受け取れる |
| 受取総額が追納額を上回る目安 | 約75歳 | 65歳受給開始の場合 |
| 節税効果(概算イメージ) | 約6.3万円 | 1年でまとめて追納し、所得税率5%(2026年分の年収400万円)の場合。所得税と住民税の合計 |
※年金額は2026年度の老齢基礎年金満額(847,300円)に基づく概算です。実際の年金額は日本年金機構の計算と一致しない場合があります。節税効果は所得状況(扶養控除等)により大きく異なります。
追納を検討するときの注意点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 追納期限は10年 | 免除・猶予を受けた月から10年を過ぎると、その月の分は追納できなくなります。特に学生納付特例は在学中に利用していることが多く、社会人になってから忘れがちです。期限を過ぎると年金を増やす選択肢そのものが失われます。 |
| 3年度目以降は加算額 | 承認の翌年度から3年度目以降に追納する場合、経過期間に応じた加算額が上乗せされます。早い時期ほど追納額は少なくなります。 |
| 生活防衛資金を優先 | 追納にまとまった金額が必要です。緊急時の生活資金(生活費3〜6ヶ月分)を確保した上で検討しましょう。 |
| 年金額は将来変動する | 年金額は物価や賃金に合わせて毎年見直され、制度改定で変わることもあります。現在の金額が将来も続くとは限りません。 |
| 投資との比較は性質が違う | 追納は「終身の年金保障を強化する」もの、投資は「自分で資産を運用する」ものです。目的が異なるため、どちらが「お得」かという単純比較ではなく、自分の状況と優先順位に応じて判断しましょう。 |
自分の条件で試算してみよう

まとめ ― まずは自分の年金記録を確認しよう
・「ねんきんネット」で免除・猶予期間と追納期限を確認したか
・免除の種類ごとの年金反映の違いを理解しているか
・追納額を支払っても生活防衛資金に影響しないか
・3年度目以降の加算額を把握しているか
・年金額が将来変動する可能性を理解した上で判断しているか
関連ツール・記事
- → 年金追納メリット計算(自分の条件で追納額・年金増額・節税効果を試算したい人に)
- → 保険vs投資バランス診断(保険料を見直して投資に回すか検討したい人に)
- → FIREタイプ診断ガイド(FIREの4タイプと必要資産を知りたい人に)
本記事は情報提供を目的としており、年金の追納を推奨するものではありません。年金額の試算は2026年度の制度・保険料額に基づく概算であり、実際の年金額は日本年金機構の計算と一致しない場合があります。追納の可否・金額は年金事務所または「ねんきんネット」でご確認ください。投資に関する記述は情報提供であり、特定の金融商品を推奨するものではありません。追納・投資・資産形成に関する判断は、ご自身の状況に応じて専門家(FP・社会保険労務士等)にご相談ください。
参考情報・公的機関リンク
本記事は以下の公的機関の公表資料を参考に作成しています。最新情報・最新の制度内容は各公式サイトでご確認ください。
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国税庁「タックスアンサー」
— 所得税・住民税・各種控除の解説 -
厚生労働省「年金・日本年金機構」
— 国民年金・厚生年金の制度と給付額
よくある質問
Q. 年金の追納とは?
免除や猶予を受けた期間の国民年金保険料を、後から納めることです。追納すると、その期間が満額の年金額に反映され、将来の年金が増えます。
Q. 年金の追納はいつまでできる?
追納できるのは、追納を申し込む月の前10年以内の期間です。期限を過ぎると追納できなくなるため、早めの検討が大切です。
Q. 年金の追納はしたほうが得?
追納した保険料は全額が社会保険料控除になり節税にもなります。将来の年金も増えます。一方でまとまったお金が要るので、生活防衛資金を確保したうえで検討します。


