※本記事の数値・制度内容は2026年5月時点の情報(日本年金機構・厚生労働省)に基づきます。最新の正式情報は記事末尾の公的機関リンクからご確認ください。
障害年金は、病気やケガで日常生活や仕事に制限が生じた場合に支給される年金制度です。「障害」というと身体障害をイメージしがちですが、うつ病・がん・糖尿病・人工透析・心疾患などの内部疾患も対象。年金というと「老後にもらうもの」のイメージが強いですが、実は現役世代でも条件を満たせば受給できます。この記事では、障害年金の仕組み・金額・申請手順を整理します。
障害年金は「2階建て」
障害年金は、国民年金と厚生年金で2階建てになっています。加入していた年金制度によって、もらえる年金の種類と金額が変わります。
| 加入していた年金 | 受け取れる障害年金 |
|---|---|
| 国民年金(自営業・主婦等) | 障害基礎年金(1〜2級) |
| 厚生年金(会社員・公務員) | 障害基礎年金(1〜2級)+ 障害厚生年金(1〜3級) |
注目すべきは、厚生年金加入者は3級まで対象がある点。国民年金加入者は1〜2級のみ対応です。これは「初診日に厚生年金に加入していたか」で決まります。
2026年度の支給額
| 区分 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| 障害基礎年金 1級 | 88,260円 | 約 1,059,125円 |
| 障害基礎年金 2級 | 70,608円 | 約 847,300円 |
| 障害厚生年金 3級(最低保障) | 約 52,900円 | 約 635,000円 |
2026年度は前年から1.9〜2.0%の引き上げ。改定は4月分からですが、実際の振込は6月(4・5月分)からとなります。
子・配偶者がいる場合の加算
- 子の加算:1人につき年243,800円(2人目まで)/3人目以降は年81,300円
- 配偶者加算(障害厚生年金1・2級のみ):65歳未満の配偶者がいる場合 年243,800円
たとえば障害基礎年金2級+子2人なら、年間847,300円 + 487,600円 = 約134.5万円。月額にすると約11万円が支給されます。
障害厚生年金(1・2級)の報酬比例部分
障害厚生年金1・2級では、基礎年金にさらに「報酬比例部分(給与に応じた金額)」が上乗せされます。在職中の平均給与によって変動しますが、年収500万円の人なら年60〜80万円程度の上乗せが目安です。
障害厚生年金(2級)= 平均標準報酬月額 × 0.5481% × 加入月数
※加入期間が25年未満の場合は300月で計算(手厚い保障)
等級の判定基準
障害年金の等級は、身体障害者手帳の等級とは別の基準です。日本年金機構が独自の認定基準で判定します。
| 等級 | 状態の目安 |
|---|---|
| 1級 | 日常生活で常に他人の介助が必要なレベル/自力での歩行や排泄が困難など |
| 2級 | 必ずしも他人の助けが必要ではないが、日常生活が極めて困難で労働が制限されるレベル |
| 3級(厚生年金のみ) | 労働が著しい制限を受けるレベル(仕事に支障があるが日常生活は何とか可能) |
対象になる病気・ケガの例
「障害年金」と聞くと身体障害だけを想像しがちですが、対象は非常に広いです。
- 精神障害:うつ病・統合失調症・双極性障害・発達障害・知的障害
- がん(悪性新生物):化学療法後・術後障害・末期がん
- 内部疾患:人工透析(人工腎臓装着)・心疾患(ペースメーカー)・呼吸器疾患(在宅酸素療法)
- 糖尿病:合併症(網膜症・腎症・神経症)が進行した場合
- 身体障害:四肢・脊椎の障害/視覚障害/聴覚障害/音声機能障害
- 神経系疾患:脳梗塞・脳出血の後遺症・パーキンソン病
- その他:難病(特定疾患)など
受給するための3つの条件
条件1:初診日要件
その病気・ケガで最初に医師の診察を受けた日(初診日)が、国民年金または厚生年金に加入している期間内であること。20歳前の傷病による場合は「20歳前傷病による障害基礎年金」として支給対象になります。
条件2:保険料納付要件
初診日の前日時点で、以下のいずれかを満たすこと:
- 初診日の属する月の前々月までに、保険料納付済期間と免除期間を合わせて加入期間の3分の2以上であること
- または、初診日の前々月までの直近1年間に未納がないこと(特例)
「未納だらけだと障害年金は出ない」のがこの仕組み。免除や猶予の手続きは必ずしておくのが重要です。
条件3:障害認定日要件
初診日から1年6ヶ月経過した日(障害認定日)、もしくはその前に治った日に、一定の障害状態にあること。
つまり、診断書を出してすぐ受給できるわけではなく、「初診から1年6ヶ月後の状態」で判定されます。
申請の手順
- 年金事務所または市区町村役場の窓口で相談
- 受診状況等証明書(初診日を証明する書類)を取得
- 診断書を主治医に作成依頼(種類は障害ごとに異なる)
- 病歴・就労状況等申立書を本人が記入
- 年金事務所に提出 → 審査(約3〜4ヶ月)
- 認定されれば初診日から1年6ヶ月後にさかのぼって支給(5年遡及まで可)
申請でつまずきやすいポイント
- 初診日の証明:何年も前のカルテが残っていないケースが多い
- 診断書:医師が「障害年金用」の診断書フォーマットに慣れていない場合あり
- 病歴・就労状況等申立書:日常生活の困難さを具体的に書く必要
- 不支給判定からの不服申立:審査請求 → 再審査請求 → 行政訴訟まで可能
「自分で申請するのが難しい」と感じたら、社会保険労務士(障害年金専門)に依頼する選択肢もあります。費用はかかりますが、認定率が大きく上がるケースが多くあります。
障害年金と他の収入の関係
仕事との両立
障害年金は仕事をしながらでも受給可能です。ただし、3級は「労働の制限」が認定基準なので、就労状況によって等級が変わる可能性があります。1・2級は労働の有無が直接の判定基準ではありません。
傷病手当金との関係
会社員が病気で休んでいる時にもらえる「傷病手当金」(健康保険)と障害年金は併用可能ですが、調整される場合があります。両方の対象になる場合は、年金事務所と協会けんぽに確認しましょう。
生活保護との関係
障害年金を受給していても、収入が最低生活費以下なら生活保護を受給できます。両者は併用可能で、生活保護費から障害年金額が差し引かれる形になります。
税金
障害年金は非課税所得です。所得税・住民税はかかりません。これは老齢年金との大きな違いです。
「自分は関係ない」と思っている人へ
知っておくと役立つ場面
- 医療保険・収入保障保険を検討する時:障害年金で月10万円程度の保障があると分かれば、保険の必要額を抑えられる
- 家族の介護が必要になった時:親や配偶者が対象になる可能性
- うつ病など長期療養になった時:仕事復帰までの生活費を支える
- がん治療中:治療と仕事の両立期間の収入源
「公的保障がここまで手厚い」と知らずに、過剰な民間保険に入ってしまうケースは少なくありません。公的保障の中身を知ることが、適切な保険選びの第一歩です。
整理すると、こういうことだった
- 障害年金は病気・ケガで日常生活や仕事に制限が生じた時の生活保障
- 2階建て構造:障害基礎年金(1〜2級)/障害厚生年金(1〜3級)
- 2026年度の月額:1級88,260円・2級70,608円・3級最低保障約52,900円
- 子の加算・配偶者加算もあり(年20万〜30万円規模)
- 対象は身体障害だけでなく、うつ病・がん・糖尿病・内部疾患まで広範囲
- 3条件:初診日要件・保険料納付要件・障害認定日要件
- 申請から認定まで3〜4ヶ月。難しい場合は社労士に相談
- 仕事との両立可能・非課税・他の制度(傷病手当金・生活保護)との併用も可
あわせて読みたい
参考情報・公的機関リンク
-
日本年金機構「障害年金」
— 制度・申請方法・診断書 -
日本年金機構「障害年金の制度」
— 制度概要・認定基準 -
政府広報オンライン「障害年金の制度」
— わかりやすい制度ガイド
よくある質問
Q. 障害年金はいくらもらえる?
障害基礎年金は等級により定額(1級・2級)、障害厚生年金は報酬比例で計算されます。2026年度の金額や子の加算は等級・家族構成で変わります。
Q. 障害年金は誰がもらえる?
病気やケガで一定の障害状態になり、保険料の納付要件を満たす人が対象です。初診日にどの年金に加入していたかで、受けられる年金が変わります。
Q. 障害年金の対象になる病気は?
身体障害だけでなく、がん・糖尿病などの内部疾患、うつ病・統合失調症などの精神疾患も対象になります。日常生活や就労への支障の程度で等級が判定されます。


