退職金は人生で数回あるかないかの大きな収入です。受け取り方次第で手取りに数十万円〜百万円以上の差がつくこともあります。一時金と年金、それぞれの仕組みを理解したうえで、自分に合った選択をしましょう。
一時金で受け取る場合の税金
退職金を一括で受け取ると「退職所得」として課税されます。退職所得には他の所得とは別の優遇措置があり、税負担が軽くなるよう設計されています。
退職所得控除の計算
| 勤続年数 | 控除額の計算式 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 x 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 x(勤続年数 – 20年) |
たとえば勤続35年の場合:800万円 + 70万円 x 15 = 1,850万円が非課税枠です。
退職所得の計算
控除を引いたうえにさらに半分にしてもらえるので、税負担はかなり軽くなります。
さらに一時金の大きなメリットは、社会保険料(国民健康保険・介護保険)の算定に含まれないことです。税金以外の負担がゼロな点も見逃せません。
年金で受け取る場合の税金と社会保険料
年金として分割で受け取ると「雑所得」として課税されます。公的年金と同じく、公的年金等控除が適用されます。
メリット
- 受取期間中、残高が運用されるため受取総額が増える可能性がある
- 毎年一定額の収入があることで老後の生活設計が立てやすい
デメリット
- 毎年、所得税・住民税が課税される
- 国民健康保険料・介護保険料の算定対象に含まれ、保険料が上がる
- 公的年金と合算されるため、控除枠を超えやすい
具体例:退職金2,000万円、勤続35年の場合
退職金2,000万円を勤続35年で受け取る場合を、一時金と年金(15年・利率1%)で比較してみます。公的年金は年200万円と仮定します。
| 一時金 | 年金(15年) | |
|---|---|---|
| 受取総額 | 2,000万円 | 約2,160万円 |
| 税金(所得税+住民税) | 約11.5万円 | 約270万円 |
| 社会保険料増分 | 0円 | 約230万円 |
| 実質手取り | 約1,989万円 | 約1,660万円 |
このケースでは一時金の方が約330万円も手取りが多い結果になります。退職所得控除が大きく効いていること、年金受取では税金に加えて社会保険料の負担が15年間続くことが主因です。
2026年の注意点:iDeCoとの「10年ルール」
2026年1月から、退職所得控除の重複排除ルールが厳しくなりました。
従来:iDeCoの一時金を受け取ってから5年空ければ、退職金の退職所得控除をフルに使えた
改正後:10年空けないとフルに使えない(前年以前9年以内に他の退職手当を受け取った場合、控除が調整される)
一時金 vs 年金、判断のポイント
| 一時金が向いている人 | 年金が向いている人 |
|---|---|
| 退職金が退職所得控除の範囲内 | 退職金が控除額を大きく超える |
| 住宅ローンの繰上返済に使いたい | 企業年金の運用利率が2%以上ある |
| 自分でNISA等に投資して運用したい | 計画的に使う自信がない(使い込み防止) |
| 社会保険料の負担増を避けたい | 定期的な収入があると安心する |
自分の退職金で試算してみよう
「一時金と年金、自分の場合はどちらが有利か?」は退職金の額、勤続年数、公的年金の額によって変わります。下のシミュレーターで条件を入力すれば、手取り額の比較がすぐにわかります。
まとめ
- 一時金は退職所得控除+1/2課税の優遇があり、社会保険料もかからない
- 年金受取は雑所得として課税され、健康保険料・介護保険料も上がる
- 退職金が控除の範囲内なら、一時金が手取りで有利になるケースが多い
- 2026年1月からiDeCoとの重複排除が「5年→10年」に厳格化
- 「控除枠まで一時金+残りを年金」の併用も有効な選択肢
※本記事の税額計算は2026年時点の税制に基づく概算です。退職所得控除の勤続年数は1年未満切り上げ。実際の税額は個別の事情により異なります。退職金の受取方法は勤務先の規程によって選択肢が異なりますので、事前に確認してください。
あわせて読みたい
参考情報・公的機関リンク
本記事は以下の公的機関の公表資料を参考に作成しています。最新情報・最新の制度内容は各公式サイトでご確認ください。
-
金融庁「NISA特設ウェブサイト」
— NISA制度の最新情報・対象商品など -
iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)
— iDeCoの制度・拠出限度額・税制優遇 -
国税庁「タックスアンサー」
— 所得税・住民税・各種控除の解説 -
国税庁「確定申告書等作成コーナー」
— 確定申告書の作成・税額の試算 -
厚生労働省「年金・日本年金機構」
— 国民年金・厚生年金の制度と給付額 -
厚生労働省「医療保険」
— 健康保険・高額療養費・後期高齢者医療など -
全国健康保険協会(協会けんぽ)
— 健康保険料率・任意継続・給付など
よくある質問
Q. 退職金は一時金と年金どちらが得?
一時金は退職所得控除で税負担が軽く、年金受け取りは分割で運用益が上乗せされる一方、税・社会保険料がかかります。手取りで比較して判断します。
Q. 退職金にかかる税金は?
一時金は退職所得控除を引いた残りの2分の1に課税され、税負担はかなり軽くなります。年金受け取りは公的年金等控除の対象ですが、他の年金と合算で課税されます。
Q. 退職金とiDeCoの「10年ルール」とは?
iDeCoと退職金を別々の年に一時金で受け取る際、退職所得控除の重複利用が制限されるルールです。受け取る順番とタイミングで税負担が変わります。



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