※本記事は2026年9月時点の情報です。日本学生支援機構(JASSO)の奨学金について書いています。大学独自や地方公共団体の奨学金は取り扱いが異なります。
まず結論:3行でわかる要点
- 使える制度は減額返還と返還期限猶予の2つ。どちらも自分から願い出る
- 減額返還は、延滞していると使えない。滞る前に動くかどうかで結果が変わる
- 延滞が3か月続くと個人信用情報機関の登録対象。住宅ローンやカードに影響する
返還が始まってから、収入が思ったように伸びなかった。転職の合間に間が空いた。理由はさまざまですが、毎月の引き落としが重くなる時期はあります。
JASSOには、返還が難しくなった人のための制度が用意されています。ただしどちらも「願い出る」制度で、黙っていると適用されません。しかも片方は、延滞してからでは使えなくなります。
この記事では、2つの制度の違いと、延滞したときに何が起きるのかを整理します。
使える制度は2つある
目的が違います。返せる額まで下げたいのか、いったん止めたいのかで選びます。
| 減額返還 | 返還期限猶予 | |
|---|---|---|
| やること | 月々の額を減らす | 返還そのものを先送りする |
| 減らせる幅 | 2分の1・3分の1・4分の1・3分の2から選ぶ | その期間は0円 |
| 期間の上限 | 通算15年(180か月) | 通算10年(120か月) |
| 収入の目安 (給与所得者) |
年収400万円以下 | 年収300万円以下 |
| 延滞していても 使えるか |
使えない | 延滞していても願い出られる |
| 返す総額 | 変わらない(期間が延びる) | 変わらない(元金も利子も免除されない) |
どちらも借金が減るわけではありません。返す時期をならす制度です。ただし、延滞して信用情報に記録が残ることと比べれば、意味はまったく違います。
減額返還は2024年4月に使いやすくなった
月々の額を下げて、その分だけ返還期間を延ばす制度です。2024年4月に基準が緩和され、対象が広がりました。
| 状況 | 給与所得者(年間収入) | 給与所得以外(年間所得) |
|---|---|---|
| 基本 | 400万円以下 | 300万円以下 |
| 扶養する子が2人 | 500万円以下 | 400万円以下 |
| 扶養する子が3人以上 | 600万円以下 | 500万円以下 |
※このほか、被扶養者1人につき38万円を控除して判定します。
※給与所得者の基準は、2024年4月に325万円から400万円へ引き上げられました。
こういう人は使えない
願い出た時点で延滞している人、口座振替に加入していない人、月賦返還以外の方法を選んでいる人、平成29年度以降に採用された第一種奨学生で所得連動返還方式を選んでいる人は対象外です。
いちばん引っかかりやすいのが延滞です。引き落としが落ちる前に願い出るのが要点になります。
適用は1回の願い出につき12か月まで。必要なら改めて願い出て延長でき、通算15年(180か月)が限度です。
返還期限猶予は、いったん止める制度
収入が基準を下回っている間、返還そのものを先送りします。経済困難で申請する場合の基準は、給与所得者なら年収300万円以下、給与所得以外なら年間所得200万円以下です。
使える理由は経済困難だけではありません。
- 災害
- 傷病
- 経済困難
- 失業
- 生活保護受給中
- 産前休業・産後休業および育児休業
- 一部の大学校在学
- 海外派遣
通算10年(120か月)が上限です。ただし災害、傷病、生活保護受給中、産前産後休業・育児休業、一部の大学校在学、海外派遣については、この10年の制限がありません。給付奨学金の返還にも上限はありません。
免除ではない
JASSOの説明にもはっきり書かれています。返還期限の猶予は一定期間先送りする制度であり、返還すべき元金や利子が免除されるものではありません。止めている間に借金が消えるわけではない、という点は押さえておきたいところです。
延滞すると、3か月で線を越える
ここが本題です。返還期日を過ぎると年3%の延滞金がかかります(令和2年4月1日以降。それ以前は年5%、さらに前は年10%でした)。
ただ、延滞金より重いものがあります。
返還の延滞が3か月以上になると、個人信用情報機関への登録対象になります。新しく返還を始めた人の場合は、返還開始から6か月が経過したあと、延滞3か月以上で対象です。
登録されるのは、氏名・生年月日・住所・電話番号・勤務先などの本人情報と、貸与金額・最終返済日といった契約の内容、そして延滞や代位弁済といった返済の状況です。
この記録は返還が完了してから5年後に削除されます。延滞を解消しても、すぐ消えるわけではありません。
生活にどう響くか
JASSOの説明では、登録されるとスマートフォンの分割払いやクレジットカードの利用ができなくなる、住宅ローン等が組めなくなる場合があるとされています。金融機関がこの情報を見て、経済的な信用が低いと判断することがあるためです。
数万円の引き落としを止めたことが、数年後の住宅ローンに響く。これが「早めに願い出る」ことの理由です。
順番としては、こうなる
- 引き落としが厳しいと分かった時点で、落ちる前にJASSOに連絡する
- 返せる見込みがあるなら減額返還。延滞前でないと使えない
- いったん止めたいなら返還期限猶予。こちらは延滞していても願い出られる
- すでに延滞している場合も、放置しない。猶予の道は残っている
モリガマがちょうどいいものを持ってきてくれました。

返せる状態に戻ったら、次は「早く返すべきか」という別の問題になります。金利によって答えが変わります。
まとめ
- 制度は減額返還と返還期限猶予の2つ。どちらも願い出が要る
- 減額返還は月々を2分の1・3分の1・4分の1・3分の2に。通算15年まで
- 2024年4月に基準が緩和。給与所得者は325万円以下から400万円以下へ
- 減額返還は延滞していると使えない。引き落としが落ちる前に動く
- 猶予は年収300万円以下が目安で通算10年。災害・傷病・育休などは上限なし
- どちらも返す総額は減らない。時期をならす制度
- 延滞3か月で個人信用情報機関の登録対象。記録は返還完了から5年後に削除
よくある質問(FAQ)
Q. 減額返還と返還期限猶予は、どちらを選べばいいですか?
A. 減らせば返せるなら減額返還、いったん止めたいなら返還期限猶予です。減額返還は月々の額を2分の1・3分の1・4分の1・3分の2のいずれかに下げ、その分だけ返還期間を延ばします。返還期限猶予はその期間の返還を先送りします。どちらも返す総額は変わりません。
Q. すでに延滞していますが、制度は使えますか?
A. 返還期限猶予は延滞していても願い出られます。一方、減額返還は願い出た時点で延滞していると利用できません。このため、引き落としが落ちる前にJASSOへ連絡することに意味があります。すでに延滞している場合も、放置せず猶予の相談をしてください。
Q. 収入の基準を超えていると、まったく使えませんか?
A. そうとは限りません。返還期限猶予では、基準額を超えている場合でも、収入の減少や休業、失業の状態が7か月以上続いていることを示せれば認められることがあります。まずは相談してみてください。
Q. 奨学金を延滞すると、どうなりますか?
A. 返還期日の翌日から年3%の延滞金がかかります。さらに延滞が3か月以上になると個人信用情報機関への登録対象になります。登録されると、スマートフォンの分割払いやクレジットカードの利用ができなくなったり、住宅ローンが組めなくなる場合があります。この記録は返還が完了してから5年後に削除されます。
Q. 減額返還や猶予を使うと、返す金額は減りますか?
A. 減りません。減額返還は月々の額を下げる代わりに返還期間が延びるだけで、返還予定総額は変わりません。返還期限猶予も、返還すべき元金や利子が免除される制度ではないとJASSOが明記しています。どちらも返す時期をならす制度です。
参考・出典
※適用の可否は個別の事情によります。手続きの前に、日本学生支援機構の奨学金相談センターにご確認ください。

