※本記事は2026年8月時点の情報です。年金額は令和8年度の価額にもとづく概算で、実際の金額は加入期間や報酬により異なります。
まず結論:3行でわかる要点
- 増えるのは2階部分だけ。1階の老齢基礎年金は3号のままでも減らない
- 年収106万円で10年働いたなら、増えるのは月およそ4,800円
- 払った厚生年金保険料は受け取り始めから約17年で取り戻せる計算
扶養を外れて厚生年金に入ると、将来の年金はどう変わるのか。「保険料を取られるだけ」と感じている方もいれば、「たくさん増える」と期待している方もいます。
どちらも実態からは少しずれています。増えるのは決まった部分だけで、その額は計算で出せます。数字で確かめていきます。
変わるのは2階だけ。1階は変わらない
公的年金は2階建てです。ここを押さえると、話がすっきりします。
| 第3号(扶養内) | 第2号(厚生年金) | |
|---|---|---|
| 1階 老齢基礎年金 |
納付済期間になる 保険料の負担なし |
納付済期間になる 同じ扱い |
| 2階 老齢厚生年金 |
なし | ここが増える |
| 保険料 | 払わない | 給与から天引き 半分は勤め先が負担 |
ここでよくある誤解が2つあります。
誤解1:扶養のままだと年金がもらえない
そんなことはありません。第3号被保険者の期間は保険料納付済期間としてカウントされます。保険料を1円も払っていなくても、その期間分の老齢基礎年金は受け取れます。令和8年度の満額は月額70,608円(年額847,296円)で、40年間すべて納付済みならこの額になります。
誤解2:厚生年金に入ると基礎年金も増える
増えません。1階部分の扱いは第3号でも第2号でも同じです。厚生年金に入って増えるのは2階部分(老齢厚生年金)だけです。つまり、保険料を払うことで買っているのは2階だけ、ということになります。
いくら増えるのか
2階部分の計算式は決まっています。平成15年4月以降の期間については次のとおりです。
平均標準報酬額 × 5.481 ÷ 1000 × 加入期間の月数
この式に当てはめると、年収と加入年数ごとの上乗せ額が出ます。
| 年収 | 10年働いた場合 | 20年働いた場合 |
|---|---|---|
| 106万円 | 年 57,879円 月 約4,800円 |
年 115,759円 月 約9,600円 |
| 130万円 | 年 72,349円 月 約6,000円 |
年 144,698円 月 約12,000円 |
| 160万円 | 年 88,134円 月 約7,300円 |
年 176,269円 月 約14,700円 |
※標準報酬月額は年収106万円で88,000円、130万円で110,000円、160万円で134,000円として計算。令和8年度の価額による概算です。
払った保険料は、いつ取り戻せるか
年金は一度きりの受け取りではありません。受給が始まったら、亡くなるまで毎年受け取ります。そこで、払った厚生年金保険料を年金の増加分で割ってみます。
| 年収 | 10年で払う 厚生年金保険料 |
年金の増加 | 回収まで |
|---|---|---|---|
| 106万円 | 966,240円 | 年 57,879円 | 約16.7年 |
| 130万円 | 1,207,800円 | 年 72,349円 | 約16.7年 |
| 160万円 | 1,471,320円 | 年 88,134円 | 約16.7年 |
年収がいくらでも、回収までの年数は約16.7年で同じになります。保険料も年金額も、どちらも標準報酬月額に比例して決まるためです。
65歳から受け取り始めるなら、81歳を過ぎたあたりで払った分を超えます。厚生労働省の令和6年簡易生命表では、65歳時点の平均余命は男性19.47年、女性24.38年です。平均まで生きれば、払った以上を受け取る計算にはなります。
※この比較は本人負担分のみで計算しています。実際には同額を勤め先も負担しているため、制度全体では倍の保険料が投入されています。また物価や賃金による改定は考慮していません。
年金以外にも変わるところがある
厚生年金の話ばかりしてきましたが、扶養を抜けて社会保険に入ると、健康保険のほうも変わります。こちらは老後ではなく今の生活に効きます。
- 傷病手当金:病気やケガで働けないとき、標準報酬日額の3分の2が最長1年6か月支給されます。扶養に入っている間は対象外でした
- 出産手当金:産休中に同じく3分の2が支給されます
- 障害厚生年金:障害の状態になったとき、基礎年金に上乗せがあります。3級は厚生年金だけの給付です
- 遺族厚生年金:亡くなったとき、遺族への給付に厚生年金分が加わります
年金の増加だけを見て「月4,800円のために保険料を払うのか」と考えると、これらが抜け落ちます。逆に、これらを強調しすぎて「入ったほうが絶対に得」と言い切るのも正確ではありません。手取りは確実に減り、給付は状況次第で受け取るという関係です。
モリガマがちょうどいいものを持ってきてくれました。

いまの働き方だと将来の年金がいくらになるか、目安を出せます。扶養を抜ける前と後で比べてみてください。
まとめ
- 扶養を抜けて増えるのは2階の老齢厚生年金だけ
- 1階の老齢基礎年金は、第3号のままでも納付済期間になるので変わらない
- 計算式は平均標準報酬額 × 5.481 ÷ 1000 × 月数
- 年収106万円で10年なら月およそ4,800円の上乗せ
- 払った保険料の回収は年収に関係なく約16.7年
- 年金のほかに傷病手当金・出産手当金・障害厚生年金も使えるようになる
よくある質問(FAQ)
Q. 扶養に入っている間は年金がもらえないのですか?
A. もらえます。国民年金の第3号被保険者である期間は、保険料を負担していなくても保険料納付済期間としてカウントされます。そのため老齢基礎年金の対象になります。令和8年度の満額は月額70,608円(年額847,296円)で、40年間すべてが納付済みの場合の金額です。
Q. 厚生年金に入ると、基礎年金も増えますか?
A. 増えません。老齢基礎年金の扱いは第3号被保険者でも第2号被保険者でも同じです。厚生年金に加入して増えるのは、2階部分にあたる老齢厚生年金だけです。
Q. 年金はいくら増えますか?
A. 報酬比例部分の計算式は「平均標準報酬額 × 5.481 ÷ 1000 × 加入期間の月数」です(平成15年4月以降の期間)。年収106万円で10年間加入した場合、年額およそ57,879円、月あたり約4,800円の上乗せになります。年収130万円なら年額約72,349円、年収160万円なら年額約88,134円です。
Q. 払った保険料は取り戻せますか?
A. 本人が負担した厚生年金保険料と年金の増加額を単純に比べると、受給開始からおよそ16.7年で払った額に達します。保険料も年金額も標準報酬月額に比例するため、年収にかかわらずこの年数はほぼ同じです。65歳から受け取る場合、81歳を過ぎたあたりが目安になります。
Q. 扶養を抜けると、年金以外に変わることはありますか?
A. 健康保険の給付が変わります。病気やケガで働けないときの傷病手当金、産休中の出産手当金が使えるようになります。いずれも扶養に入っている間は対象外です。また障害厚生年金や遺族厚生年金の対象にもなります。一方で保険料が給与から天引きされるため、手取りは減ります。
参考・出典
本記事は情報提供を目的とした一般的な解説です。年金額の試算は令和8年度の価額と平成15年4月以降の乗率にもとづく概算で、実際の金額は加入期間、報酬の推移、今後の改定により変わります。ご自身の見込額はねんきん定期便またはねんきんネットでご確認ください。

