※本記事は2026年10月時点の情報です。税額は2026年分(令和8年分)の所得税と、2027年度の住民税で計算しています。
まず結論:3行でわかる要点
- 控除額は、そのまま戻るお金ではありません。生命保険料控除(払った保険料に応じて受ける控除)で減る税金は、この例では年約4,800円です。
- 手元のお金は、減る税金から追加で払うお金を引いて比べます。
- 税金が減る分は、所得税の精算と翌年の住民税に分かれて反映されます。
「控除が使えます」と聞くと、書かれた金額がそのまま口座に戻るように感じませんか。けれど、先に保険料などを払う場合は、その支出も合わせて見る必要があります。
この記事では、年収500万円の会社員を例に、控除によるお金の動きを整理します。
「控除額」と「戻るお金」は別のもの
控除には、引く場所が違う仕組みがあります。まずは所得控除(税金を計算するもとの所得から引く仕組み)です。生命保険料控除は、こちらに当たります。
所得控除で減る税金の目安
控除額 × 税率
所得税と住民税で、それぞれ計算します。控除額が違う場合もあります。
もうひとつは、税額控除(計算した税金そのものから引く仕組み)です。住宅ローン控除が当てはまります。ただし、計算上の控除額をすべて引けるとは限りません。
ここでは、年収500万円で独身の会社員を例にします。所得税の税率は5%、住民税の所得にかかる部分は10%です。
2026年分は、この例の基礎控除(所得から差し引く基本の控除)が104万円です。その結果、課税所得(控除を引いたあとの税金の計算対象額)が178.5万円となり、所得税率は5%になります。
計算の前提は、年収500万円の手取りは約393万円で整理しています。
生命保険料控除では、住民税も2,800円減ります。合わせて年約4,800円です。控除額と減る税金を分けると、実際の金額が見えてきます。
見るのは「手元のお金がいくら増減するか」
減る税金がわかっても、それだけでは手元のお金の増減はわかりません。控除を受けるために、新しく払うお金があるかを確かめます。
手元のお金の増減を見る式
手元のお金の増減 = 減る税金 − そのために払ったお金
すでに払った支出について申告する場合は、追加の支払いと分けて考えます。
たとえば、ふるさと納税で5万円を寄附したとします。控除の上限内なら、税金が4万8,000円減ります。
これは、年収が504万8,000円になるという意味ではありません。先に5万円が出ていきます。あとから税金が減る分を差し引いても、手元のお金は2,000円減ります。
その代わり、返礼品のある寄附先なら返礼品が届きます。税金が減る額と、支出を含めた家計の変化は別に見る必要があります。
年収500万円の人で、6つの控除を比べる
基本のモデルは、年収500万円の独身の会社員です。年齢は40歳未満で、扶養家族はいません。健康保険は協会けんぽ東京を想定しています。
表は、それぞれの控除を個別に使った場合の比較です。配偶者控除・扶養控除の行だけは、対象となる家族がいる場合に条件を変えています。すべての金額を足せるという意味ではありません。
iDeCo(自分で掛金を積み立てる私的年金)も、掛金が所得控除の対象です。ふるさと納税は、ワンストップ特例(条件を満たせば確定申告なしで控除を受けられる手続き)を使う例です。
| 控除 | 例 | そのために払うお金 | 減る税金(年) | 手元のお金の増減 | 代わりに残るもの |
|---|---|---|---|---|---|
| 生命保険料控除 新しく保険に入る場合 |
年8万円超の保険料 一般の枠1つ |
−8万円〜 | 約4,800円 | 約−7万5,000円〜 | 保障 |
| 生命保険料控除 すでに入っている保険を申告する場合 |
年8万円超の保険料 一般の枠1つ |
追加は0円 | 約4,800円 | 約+4,800円 | ― |
| iDeCo | 掛金は月2万円 年24万円 |
−24万円 | 約3万6,000円 | 約−20万4,000円 | 原則60歳まで引き出せない積立 拠出額24万円 |
| 医療費控除 | 医療費を年20万円払った年 保険金などの補てんなし |
追加は0円 すでに払った分 |
約1万5,000円 | 約+1万5,000円 | ― |
| ふるさと納税 | 寄附5万円 上限内・ワンストップ特例 |
−5万円 | 4万8,000円 | −2,000円 | 返礼品 自治体の調達額は寄附額の3割以下 |
| 配偶者控除・扶養控除 | 所得税の控除38万円がつく場合 | 0円 | 約5万2,000円 | 約+5万2,000円 | ― |
| 住宅ローン控除 | 年末のローン残高3,000万円 適用条件を満たす場合 |
追加は0円 返済は別にある |
最大 約18万円 | 最大 約+18万円 | ― |
※金額は概算です。「追加は0円」は、もとの保険料や医療費が無料になるという意味ではありません。表の「―」は、申告によって新たに受け取るものがないことを示します。
※iDeCoの増減には手数料を含めていません。積立の欄は拠出額であり、運用後の残高や将来の受取額を保証するものではありません。
生命保険料控除:新しく入る場合と、すでに入っている場合を分ける
この例の新制度の一般枠では、所得税の控除上限は4万円、住民税は2万8,000円です。新しく保険料を払う場合、減る税金より支払いのほうが大きくなります。すでに入っている人は、追加の契約なしで、対象の保険料を申告できます。なお、23歳未満の扶養親族がいる世帯は、2026年分と2027年分の所得税で、一般枠の上限が6万円に広がります。枠ごとの扱いは、生命保険料控除を使い切る戦略で確認できます。
iDeCo:税金は減るが、積立のお金はすぐには使えない
掛金の全額が、小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなどの掛金を所得から引く控除)の対象です。積立は原則60歳まで引き出せず、受け取るときに税金がかかる場合もあります。口座管理の手数料は月171円からで、年2,052円からかかります。2027年1月からは、月186円からになります。
医療費控除:すでに払った医療費を申告する
このモデルの控除額は、払った医療費から保険金などの補てん額と10万円を引いた額です。医療費が20万円で補てんがなければ、控除額は10万円になります。総所得金額等(税法上の所得を合計した額)が200万円未満の場合、差し引く基準はその5%です。受けるには、確定申告(自分で所得や税金を税務署に申告する手続き)が必要です。
ふるさと納税:納める先が変わる前払いに近い
控除の上限内なら、寄附額から2,000円を引いた額が税金から差し引かれます。ワンストップ特例を使う場合は、控除される全額が翌年度の住民税に反映されます。寄附も含めた支出では、税金だけが減るというより、納める先が変わる前払いに近い仕組みです。上限はほかの控除でも変わるため、ふるさと納税上限額チェッカーで条件を確かめます。
配偶者控除・扶養控除:お金を払って受ける控除ではない
表は、所得税38万円・住民税33万円の控除がつく場合です。家族の所得や年齢などの条件で決まり、家族がいれば必ず受けられるわけではありません。配偶者控除は、本人の合計所得が900万円を超えると控除額が減ります。1,000万円を超えると、配偶者控除は受けられません。
住宅ローン控除:計算上の額と、実際に引ける額は違う
年末残高に0.7%を掛けた計算上の控除額は、21万円です。このモデルで引けるのは、所得税の約9万1,000円と、住民税の8万9,250円までです。合わせて最大約18万円で、ローンの返済は別にあります。住宅の種類や入居年で条件が変わるため、住宅ローン控除、いくら戻る?も合わせて確認してください。
手元のお金が増える控除、減る控除
控除の名前だけでは、家計への影響を比べにくくなります。新しくお金を払うのか、すでに払った分を申告するのかで整理してみます。
| グループ | 当てはまる控除 | 手元のお金 | 見るポイント |
|---|---|---|---|
| お金を払うと受けられる | 生命保険料控除(新しく入る場合) iDeCo |
減る 戻る税金は払った額の一部 |
保障や積立そのものが自分に必要か |
| すでに払ったお金・家族の状況で決まる | 医療費控除 配偶者控除・扶養控除 すでに入っている保険の申告 |
増える 追加の支払いなしで税金が減る場合 |
申告や書類の出し忘れがないか |
| 仕組みが別 | ふるさと納税 住宅ローン控除 |
ふるさと納税は上限内でも2,000円減る 住宅ローン控除は申告によって増える |
ふるさと納税は控除上限と返礼品 住宅ローン控除は税額と制度上の上限 |
この比較で、手元のお金が純粋に増えるのは、追加の支払いなしで税金が減る場合です。医療費を払った事実や、毎月のローン返済がなくなるわけではありません。
一方、新しく保険に入ったり、積立を始めたりする場合は、使える現金が減ります。その代わりに得る保障や、将来のための積立にも意味があります。必要かどうかは、税金の話と分けて判断します。
申告できる項目を整理したい場合は、見落としやすい所得控除15種類も確認できます。
お金はいつ、どこに戻る?
会社員の所得税は、毎月の給与から概算で引かれています。年末調整(会社が年間の所得税を精算する手続き)で引きすぎがあれば、還付(払いすぎた税金が戻ること)を受けます。
住民税は前年の所得をもとに計算されます。控除の効果は、翌年6月から翌々年5月までの給与に分かれて反映されます。
| 控除 | 所得税の分 | 住民税の分 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除 | 約2,000円 年末調整で12月の給与などに反映 |
年2,800円 翌年6月から、月平均で約230円ずつ天引きが減る |
| iDeCo 月2万円 |
約1万2,000円 年末調整で12月の給与などに反映 |
年2万4,000円 翌年6月から、月平均で2,000円ずつ減る |
| 医療費控除 控除額10万円 |
約5,000円 確定申告のあと、指定口座に振り込まれる |
年1万円 翌年6月から、月平均で約830円ずつ減る |
| ふるさと納税5万円 ワンストップ特例 |
なし | 年4万8,000円 翌年6月から、月平均で4,000円ずつ減る |
| 住宅ローン控除 | 1年目は確定申告で還付 2年目からは年末調整 |
所得税で引ききれない分が、上限の範囲で翌年6月からの住民税から減る |
※年末調整の還付時期や支払い方は、勤め先によって異なります。住民税の月額は平均の目安です。端数処理などにより、毎月まったく同じ差額になるとは限りません。
給与明細では、支給額が増えるというより、税金として引かれる額が減る形になります。生命保険料控除の住民税分なら、月平均で約230円の違いです。
控除によって給与の額面年収が増えるわけではありません。ただし、給与が同じでも、税金が減れば手取りは増えることがあります。新しく払った保険料などは、そこから別に出ていきます。
税率が違うと、戻る額も変わる
所得控除では、同じ控除額でも、適用される所得税率が高いほど減る税金が大きくなります。次の表は、住民税の分も合わせた年額の目安です。
※この表は復興特別所得税(復興財源のため所得税に上乗せされる税金)を除いています。生命保険料控除は、先ほどと同じ一般の枠の例です。
| 控除 | 所得税5%の人 | 所得税10%の人 | 所得税20%の人 |
|---|---|---|---|
| 生命保険料控除 1枠を上限まで |
約4,800円 | 約6,800円 | 約1万800円 |
| iDeCo 年24万円 |
約3万6,000円 | 約4万8,000円 | 約7万2,000円 |
| 医療費控除 控除額10万円 |
約1万5,000円 | 約2万円 | 約3万円 |
| 配偶者控除・扶養控除 所得税の控除38万円 |
約5万2,000円 | 約7万1,000円 | 約10万9,000円 |
所得税率が決まる基準は、年収そのものではなく課税所得です。ここで比べている税率の範囲は、次のとおりです。
- 課税所得195万円以下:所得税率5%
- 課税所得195万円超〜330万円以下:所得税率10%
- 課税所得330万円超〜695万円以下:所得税率20%
住民税の所得にかかる部分は、この比較では一律10%で見ています。
年収に置き換えた目安もあります。独身で扶養家族のいない会社員の想定です。2026年分について、社会保険料を年収の約14.7%として見ています。
- 所得税率5%:年収約520万円まで
- 所得税率10%:年収約530万〜670万円
- 所得税率20%に入り始める目安:年収約680万円から
※年収は大まかな目安です。上記の年収帯の間を、厳密な境界として読むことはできません。社会保険料やほかの控除によって変わります。さらに所得が増えると、所得税率も上がります。
高い税率がかかるのは、境目を超えた部分だけです。控除で境目をまたぐ場合は、表の金額と変わります。
2026年分と2027年分は、基礎控除の特例があります。同じ年収でも、2028年分から税率の区分が変わることがあります。
「控除が使えます」と聞いたときの確かめ方
保険や積立の説明で控除の話が出たら、次の順番で整理できます。
- 控除額ではなく、減る税金を出す。
所得税と住民税を分け、自分の税率や上限で確かめます。 - そのために払うお金と比べる。
新しく払う保険料や掛金を並べます。すでに払った分の申告なら、追加の支払いがあるかを確認します。 - 残るものが自分に必要かを、控除と切り離して考える。
保険なら保障内容、iDeCoなら積立の目的と使える時期を見ます。ふるさと納税なら、寄附先や返礼品を確かめます。
すでに保険やiDeCoを利用している人は、控除証明書(支払額などを証明する書類)の提出状況も確認できます。源泉徴収票(年間の給与や控除、所得税をまとめた書類)も、申告内容を振り返る手がかりになります。
モリガマが、条件を入れて確かめるツールを持ってきてくれました。

自分の条件で、お金の動きを確かめる
試算結果は目安です。減る税金と支払うお金を並べ、生活費として使える現金がどう変わるかを見てみてください。
まとめ
- 控除額と減る税金は別。このモデルの生命保険料控除で減る税金は、年約4,800円です。
- 手元のお金の増減は、減る税金から追加の支払いを引いて見る。
- 追加の支払いなしで税金が減れば、手元のお金は増えます。新しく保険料や掛金を払う場合は、その支出も含めます。
- 所得税は精算や還付で、住民税は翌年6月からの天引き額に反映されます。
- 保障や積立が自分に必要かは、控除による税金の変化と分けて判断します。
よくある質問(FAQ)
Q. 生命保険料控除で4万円戻りますか?
A. 4万円は所得税を計算するもとの所得から引く額で、そのまま戻る金額ではありません。この記事のモデルでは、一般の枠を上限まで使うと、所得税と住民税を合わせて年約4,800円減ります。
Q. 控除を使うと手取りの年収は増えますか?
A. 税金が減れば、給与の額面が同じでも手取りは増えることがあります。ただし、新しく払う保険料や掛金があれば、その支出も含めて手元のお金を比べます。控除によって給与の額面年収が増えるわけではありません。
Q. ふるさと納税は節税になりますか?
A. 寄附も含めた支出で見ると、納める先が変わる前払いに近い仕組みです。上限内でも、手元のお金は2,000円減ります。返礼品のある寄附先なら返礼品が届きます。上限を超えると、自己負担は増えます。
Q. 年収が高いほど控除で戻る額は大きいですか?
A. 所得控除では、同じ控除額なら、適用される所得税率が高いほど減る税金は大きくなります。ただし、税率は年収そのものではなく課税所得で決まります。住宅ローン控除のような税額控除は、別の仕組みです。
関連記事
参考・出典
- 国税庁 No.1140「生命保険料控除」 — 所得税の控除額と対象となる保険料
- 国税庁 No.1135「小規模企業共済等掛金控除」 — iDeCoの掛金に対する所得控除
- 国税庁 No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」 — 控除額の計算と申告手続き
- 国税庁 No.1191「配偶者控除」 — 控除額と本人の所得による制限
- 国税庁 No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 — 住宅ローン控除の条件と計算
- 国税庁 No.2260「所得税の税率」 — 課税所得ごとの税率
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」 — 基礎控除の改正と年末調整への反映
- 総務省「ふるさと納税のしくみ(税金の控除について)」 — 寄附金に対する控除の仕組み
- 国税庁 No.1155「ふるさと納税(寄附金控除)」 — 控除の上限とワンストップ特例
※本記事は一般的な情報の提供を目的としています。特定の保険・金融商品やサービスをすすめるものではありません。金額はモデルケースでの概算です。実際の税額や手続きは、税務署・お住まいの市区町村・勤め先などにご確認ください。

