※本記事の数値・料率・制度内容は2026年9月時点の情報に基づきます。税制改正や料率改定により変動する可能性があるため、最新の数字は記事末尾の公的機関リンクからご確認ください。
まず結論:3行でわかる要点
- 増える額が大きいのはNISA。増える額が決まっているのは学資保険
- 学資保険が持っていてNISAが持たないのは払込免除。親に万一のとき残りの保険料が要らなくなる
- 2026年度から高校の授業料が支援対象になり、貯める目標額の前提が変わった
子どもが生まれて最初の大きなお金の決断が「教育費の貯め方」です。昔は学資保険一択だった時代から、新NISAスタート後は「NISAで積み立てる派」が急増しています。この記事では、両者の仕組み・利回り・万一の保障を整理し、家庭ごとに合う選び方を解説します。
そもそも学資保険・NISAとは?
学資保険の仕組み
学資保険は、子どもの教育資金を計画的に貯めるための「貯蓄型の生命保険」です。毎月一定額の保険料を払い込み、進学のタイミング(18歳など)でまとまった「学資金」を受け取れます。契約者(親)に万一のことがあった場合は、以降の保険料の払込が免除されつつ、学資金は予定通り受け取れるのが大きな特徴です。
新NISAでの教育費積立
2024年から始まった新NISAは、年間最大360万円・生涯1,800万円まで非課税で投資できる制度。教育費を目的としたものではありませんが、つみたて投資枠(年間120万円)でインデックスファンドを積み立て、必要なタイミングで売却して教育費に充てるという使い方が主流になっています。
リターンを比較|利回りで見る差
同じ「月1万円・18年間積立」というシナリオで、両者の最終受取額を比較してみます。
学資保険のリターン
学資保険の返戻率(払い込んだ保険料に対する受取額の割合)は、近年の超低金利下では103〜108%程度が一般的です。
| 条件 | 払込総額 | 受取総額(返戻率105%想定) |
|---|---|---|
| 月1万円 × 18年 | 216万円 | 約 227万円 |
| 月1.5万円 × 18年 | 324万円 | 約 340万円 |
| 月2万円 × 18年 | 432万円 | 約 454万円 |
18年積み立てて増えるのは約11〜22万円(返戻率105%の場合)。これはほぼ「確定された増加」で、元本割れリスクは原則ありません(途中解約は除く)。
新NISAのリターン(インデックス投信)
NISAの利回りは決まっていません。ここでは年利4%と6%が18年間続いたと仮定して、同じ条件で計算します(毎月積立・月複利、手数料と税金は含みません)。
| 条件 | 払込総額 | 受取総額(年利4%) | 受取総額(年利6%) |
|---|---|---|---|
| 月1万円 × 18年 | 216万円 | 約 316万円 | 約 387万円 |
| 月1.5万円 × 18年 | 324万円 | 約 473万円 | 約 581万円 |
| 月2万円 × 18年 | 432万円 | 約 631万円 | 約 775万円 |
※金融庁の資料では、国内外の株式・債券に毎月同額ずつ20年間積み立てた場合、収益率は年率2〜8%の範囲に収まったと示されています。過去の実績であり、将来を保証するものではありません。短期的には値下がりし、払った額を下回ることもあります。
月1万円・18年積立での比較サマリー
- 学資保険:約 227万円(払込216万円+11万円)
- NISA 年利4%:約 316万円(払込216万円+100万円)
- NISA 年利6%:約 387万円(払込216万円+171万円)
仮定した利回りが続けば、NISAの受取額のほうが大きくなります。ただし利回りは決まっておらず、下がれば払った額を下回ることもあります。学資保険は増える額が小さい代わりに、加入時に決まっています。
万一への備え|保障機能の比較
はい、ここが学資保険の最大の特徴です。両者の保障機能を比較します。
| 項目 | 学資保険 | 新NISA |
|---|---|---|
| 契約者死亡時 | 以降の保険料が免除+満期に予定通り学資金を受取 | 遺族が保有資産を相続するが、以降の積立は止まる |
| 高度障害時 | 同上(払込免除+学資金受取) | 追加保障なし |
| 元本割れリスク | 満期まで保有すれば原則なし。途中解約時は損失あり | 市場下落時は資産が減る可能性あり |
| 引き出しの自由度 | 原則18歳まで引き出せない | いつでも全額・一部売却可能 |
「払込免除」の本当の価値
学資保険の「契約者死亡時の払込免除」は、実質的には掛け捨ての生命保険を内蔵しているのと同じです。月1万円・18年契約で、もし契約後すぐに親が亡くなれば、その時点で学資金216万円(払込予定総額)の保障が確保されている、と捉えられます。
つまり:「教育費の貯蓄」+「万一の死亡保障」が一体になった商品です。
代替策:NISA+掛け捨て生命保険
学資保険の払込免除に相当する保障を別途用意する方法もあります。例えば「収入保障保険」を年保険料1〜2万円で契約すれば、契約者死亡時に毎月給付が出るため、教育費分の補填が可能です。
NISAで積立しつつ、低コストの生命保険で死亡リスクをカバーする組み合わせが、現代的な選択肢として人気です。
税制優遇の違い
| 税制 | 学資保険 | 新NISA |
|---|---|---|
| 所得控除 | 生命保険料控除(一般生命保険料枠:年最大4万円控除。2026年分・2027年分は子育て世帯6万円) | なし(拠出時の優遇なし) |
| 運用益への課税 | 満期保険金の差益(受取総額 − 払込総額)は一時所得として課税(50万円特別控除あり) | 非課税(運用益にも譲渡益にも税金がかからない) |
| 途中売却時 | 解約返戻金が払込額を下回ることが多い(特に短期解約) | いつでも非課税で全額売却可能 |
学資保険は一般生命保険料控除の枠を使います。上限は年4万円で、節税効果は年5,000〜8,000円程度です。
2026年分と2027年分(所得税)は、23歳未満の扶養親族がいる世帯はこの一般枠の上限が6万円に広がります。ただし注意点があります。一般・介護医療・個人年金の3枠合計の上限12万円は変わりません(令和7年度税制改正の大綱に「合計適用限度額は12万円とする(現行と同じ。)」と明記されています)。当初は2026年分だけの特例でしたが、令和8年度の税制改正で2027年分まで延長されました(国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」)。
つまりこの拡大が効くのは、医療保険や個人年金の枠がまだ埋まっていない人だけです。すでに3枠を使い切っている人にとっては、学資保険を増やしても控除額は増えません。生命保険料控除を使い切る戦略で枠の埋まり具合を確認できます。
NISAは拠出時の控除はないものの、運用益が非課税なので長期保有では税効果が大きく出ます。
2026年度、貯める目標額の前提が変わった
「いくら貯めるか」を決めないまま商品を選ぶと、判断がぶれます。そしてこの前提は、2026年度に動きました。
高等学校等就学支援金の所得制限が撤廃され、世帯年収にかかわらず高校の授業料が支援対象になりました。上限は公立で年11万8,800円、私立で年45万7,200円です。
| 項目 | 2025年度まで | 2026年度から |
|---|---|---|
| 所得制限 | 世帯年収の目安あり | 撤廃 |
| 公立の上限 | 所得により対象外の世帯あり | 年11万8,800円 |
| 私立の上限 | 所得により対象外の世帯あり | 年45万7,200円 |
これまで所得制限で対象外だった家庭にとっては、高校3年間で公立なら約35万円、私立なら約137万円の負担が減る計算になります。学資保険の満期額を「高校入学時に何十万円」と設計していたなら、その前提を見直す余地があります。
ただしここには落とし穴があります。支援されるのは授業料だけです。教科書代も制服代も修学旅行の積立も対象外で、そこは家計から出ます。授業料以外を補う高校生等奨学給付金には所得要件があり、しかも別に申請が必要です。
詳しくは2026年度に変わった就学支援金と奨学給付金で整理しています。
つまり、高校の授業料は軽くなり、教育費の山は大学にさらに集中しました。学資保険もNISAも、受け取る時期を18歳前後に寄せる設計が、これまで以上に理にかなうということです。
判断のポイント|どんな家庭がどっちを選ぶ?
学資保険が向いている家庭
- 投資への抵抗感が強い:「元本が減るのは耐えられない」と感じる方
- 強制的に貯めたい:自分で投資管理する自信がない・忙しい
- 生命保険を別途持っていない:払込免除の保障機能を活かせる
- 使い道を固定したい:18歳まで引き出せないから「絶対使わない」と決められる
NISAが向いている家庭
- 長期投資の経験がある or 学ぶ意欲がある:価格変動に冷静に対応できる
- すでに十分な生命保険に加入している:払込免除機能が不要
- 柔軟に使いたい:教育費以外の用途(住宅・老後)にも回せる選択肢を残したい
- 余裕資金がある:万一値下がりしても他の貯蓄でカバーできる
両方併用するパターンも有効
「全額NISA」「全額学資保険」の二択ではなく、必要額の半分を学資保険で確定させ、残りをNISAで増やすという組み合わせも人気です。例えば月3万円を教育費に回せる家庭なら、学資保険1万円+NISA 2万円のような配分。確実性と成長性を両立できます。
2027年スタートの「こどもNISA」も視野に
2027年1月から始まる予定のこどもNISAは、子ども名義の非課税投資枠(年間60万円・生涯600万円・非課税期間無期限)として注目されています。親権者など(口座管理者)が口座を管理し、子ども名義で積み立てる形。12歳以降は条件付きで引き出しが可能になる見通しで、旧ジュニアNISAより柔軟な制度設計です。18歳到達時には手続きなしで成人後のつみたて投資枠へ自動的に移行する仕組みとされています(金融庁「令和8年度税制改正の大綱」の解説)。
新NISA(親名義)と併用することで、家族全体の非課税投資枠を大きく拡張できます。教育費の長期積立としては、こどもNISAも有力な選択肢になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 学資保険は途中解約するとどうなる?
払込から一定期間(おおむね10年未満)で解約すると、解約返戻金が払込総額を下回り、損失が出るのが一般的です。学資保険は「途中で止めない」ことが前提の商品です。
Q. NISAで教育費を貯めて、必要なときに値下がりしていたら?
そのリスクは現実的にあります。対策として、進学の3〜5年前から段階的に売却して現金化していく「出口戦略」を立てておくのが基本です。また、教育費の一部だけをNISAで運用し、残りは預金や学資保険でリスク分散する方法もあります。
Q. 児童手当はそのまま学資保険・NISAに回すべき?
2024年10月の拡充で18歳まで支給対象となり、所得制限も撤廃された児童手当は、出生から高校卒業まで総額約233万円以上(多子世帯ではさらに増額)を受け取れます。全額を積み立てに回すと、それだけで大学費用の半分が確保できます。生活費に組み入れず、別口座で積み立てる仕組みを作るのがおすすめです。
Q. 高校が実質無償になったなら、学資保険はもう要らない?
要否は変わりませんが、狙う時期が変わります。2026年度からの就学支援金で軽くなるのは高校の授業料だけで、教科書代・制服代・修学旅行費は対象外です。そして最大の支出である大学費用は何も変わっていません。むしろ高校が軽くなった分、貯めた資金を大学に集中させやすくなったと考えるほうが現実的です。満期時期を18歳に寄せる設計が、これまで以上に理にかないます。
Q. 学資保険の生命保険料控除は2026年に増えると聞いたけど?
増えるのは一般生命保険料控除の枠の上限で、23歳未満の扶養親族がいる世帯は2026年分と2027年分(所得税)は4万円から6万円になります。ただし一般・介護医療・個人年金の3枠合計の上限12万円は変わりません。すでに医療保険や個人年金で枠を使い切っている場合、学資保険を増やしても控除額は増えないので注意してください。
整理すると、こういうことだった
- 年利4〜6%が続いた場合、月1万円18年でNISAは学資保険より約89〜161万円多い試算。ただし利回りは決まっていない
- 確実性・保障重視なら学資保険(払込免除付き)が安心
- NISA派は別途「収入保障保険」等で死亡リスクをカバーするのが現代的
- 「学資保険×NISA」の併用も有力。確実性と成長性のバランスが取れる
- 2027年スタートのこどもNISAで非課税枠は更に広がる予定
- 判断軸は「リターン vs 確実性」「保障の有無」「使い道の柔軟性」
あわせて読みたい
参考情報・公的機関リンク
本記事は以下の公的機関の公表資料を参考に作成しています。最新情報・最新の制度内容は各公式サイトでご確認ください。
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金融庁「NISA特設ウェブサイト」
— 新NISAの制度・対象商品 -
金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」(PDF)
— 積立・分散投資の過去の収益率 -
金融庁 アクセスFSA「令和8年度税制改正の大綱」の概要(PDF)
— 0〜17歳のつみたて投資枠(年60万円・600万円・12歳以降の払出し) -
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」(PDF)
— 生命保険料控除の特例の2027年分までの延長 -
国税庁「生命保険料控除」
— 学資保険の保険料控除の仕組み -
国税庁「一時所得」
— 学資保険の満期保険金の課税 -
文部科学省「子どもの学習費調査」
— 教育費の総額目安 -
文部科学省「高校生等への修学支援」
— 就学支援金の所得制限撤廃と支給上限 -
財務省「令和7年度税制改正の大綱」
— 生命保険料控除の2026年分特例と合計限度額


