※本記事の数値・料率・制度内容は2026年5月時点の情報に基づきます。税制改正や料率改定により変動する可能性があるため、最新の数字は記事末尾の公的機関リンクからご確認ください。
年末調整は会社員の人なら毎年経験するイベントですが、書類が複雑で「なぜこれを書くのか」がわかりにくい手続きです。この記事では、年末調整の基本的な仕組みから、各書類(扶養控除等申告書・保険料控除申告書・基礎控除申告書)の書き方、よくある記入ミスまでを順に整理します。
そもそも年末調整って何のためにある?
給与から毎月引かれている所得税は、「年収がこれくらいになる見込み」という仮の計算で源泉徴収されています。実際の年収・控除額は12月末にならないと確定しないため、確定した時点で「正しい税額」との差額を精算する手続きが年末調整です。
| 月々の源泉徴収 | 年末調整での精算 |
|---|---|
| 「源泉徴収税額表」に基づく概算 | 実際の年収・控除をもとに正しい税額を計算 |
| 配偶者控除・扶養控除は概算 | 最新の家族構成・収入で再計算 |
| 保険料・住宅ローン控除は反映されない | これらを差し引いて再計算 |
多くの人は、控除を申告することで源泉徴収より税額が小さくなり、差額が12月の給与で還付されます。逆に賞与や副業で予想より所得が増えた場合は、追加徴収になることもあります。
年末調整で記入する3つの主要書類
2026年現在、会社員が提出する書類は主に以下の3つです。
| 書類名(略称) | 主な役割 |
|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書(マル扶) | 配偶者・子・親など扶養家族の情報を申告 |
| 保険料控除申告書(マル保) | 生命保険・地震保険・小規模企業共済等の控除を申告 |
| 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(マル基・配・所) | 本人の所得・配偶者の所得・所得金額調整控除を申告 |
住宅ローン控除を受ける場合は、これらに加えて「住宅借入金等特別控除申告書」を提出します(1年目は確定申告が必要、2年目以降は年末調整で完結)。
書類1:扶養控除等(異動)申告書の書き方
はい、扶養家族がいなくても提出は必要です。この書類は「翌年の源泉徴収税額」を決めるため、毎年必ず会社に提出します。
記入する主な項目
| 項目 | 記入内容・注意点 |
|---|---|
| 本人情報 | 氏名・住所・マイナンバー・生年月日(マイナンバーは2回目以降省略可) |
| 源泉控除対象配偶者 | 本人の年収900万円以下&配偶者の年収160万円以下の場合に記入 |
| 控除対象扶養親族 | 16歳以上の扶養家族(子・親など)。年齢区分で控除額が変わる |
| 障害者・寡婦・ひとり親 | 該当する場合チェック。所定の控除が追加される |
| 16歳未満の扶養親族 | 所得税の控除対象外だが、住民税の非課税判定に影響するため記入 |
扶養親族の年齢区分と控除額(所得税)
| 区分 | 年齢 | 控除額 |
|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 16歳〜18歳・23歳〜69歳 | 38万円 |
| 特定扶養親族 | 19歳〜22歳(大学生世代) | 63万円 |
| 老人扶養親族(同居) | 70歳以上(同居の親など) | 58万円 |
| 老人扶養親族(同居以外) | 70歳以上(別居の親など) | 48万円 |
大学生の子どもを扶養している場合、63万円控除と通常より大きく控除されます。所得税率20%の人なら12.6万円の節税に。
書類2:保険料控除申告書の書き方
保険料控除申告書は、生命保険料・地震保険料・社会保険料(給与天引き分以外)・小規模企業共済等掛金を申告する書類です。保険会社から届く「控除証明書」を見ながら記入します。
生命保険料控除の3つの枠
2012年以降の契約(新制度)
- 一般生命保険料(死亡保険など):年間8万円超で最大40,000円控除
- 介護医療保険料:年間8万円超で最大40,000円控除
- 個人年金保険料:年間8万円超で最大40,000円控除
3枠合計の上限:所得税で12万円、住民税で7万円
※2026年分(所得税)限定で、23歳未満の扶養親族がいる世帯は一般生命保険料枠が6万円に拡大(合計上限14万円)。使い切り戦略はこちら
地震保険料控除
地震保険は火災保険と別管理です。地震保険料は全額が控除対象(所得税で最大50,000円、住民税で最大25,000円)。火災保険のみの契約には控除がありません。
記入時の注意
- 控除証明書の数字をそのまま転記する(自分で計算しない)
- 古い保険(2011年以前契約)は「旧制度」の欄に記入。新旧で計算式が違う
- 学資保険は「一般生命保険料」の枠に入る
- iDeCoは「小規模企業共済等掛金」の枠(独立した控除枠で、全額所得控除)
書類3:基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除申告書
この書類は名前が長いですが、3つの控除を1枚にまとめたものです。
基礎控除申告書
2020年から基礎控除に所得制限が設けられました。年収2,400万円以下なら48万円控除(旧38万円から増額)、それ以上の高所得者は段階的に減額されます。
記入する金額は「給与所得控除後の所得金額」。給与額面ではなく、源泉徴収票に書かれている所得額です。
| 給与所得(控除後) | 基礎控除額 |
|---|---|
| 2,400万円以下 | 48万円 |
| 2,400万円超〜2,450万円以下 | 32万円 |
| 2,450万円超〜2,500万円以下 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円(控除なし) |
※2026年に予定されている基礎控除上乗せ特例(所得税のみ)が適用される場合は、所得に応じて控除額がさらに上乗せされる予定です。
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者の所得と本人の所得によって、控除額が3段階に分かれます。かつて「年収103万円・150万円の壁」と呼ばれていましたが、2025年・2026年の連続改正で引き上げられ、2026年は配偶者控除が年収136万円以下、配偶者特別控除の満額が160万円以下になりました(くわしくは配偶者控除の完全ガイド)。
| 配偶者の年収(給与のみ) | 本人所得900万円以下の控除額 |
|---|---|
| 136万円以下 | 38万円(配偶者控除) |
| 136万円超〜160万円以下 | 38万円(配偶者特別控除) |
| 160万円超〜201万円以下 | 段階的に減額(38→3万円) |
| 201万円超 | 控除なし |
還付金はどう計算される?
還付金の目安
| 想定ケース | 年末調整での還付目安 |
|---|---|
| 独身・控除なし | 数百円〜数千円 |
| 配偶者あり(103万以下) | 2〜4万円 |
| 生命保険3枠フル活用+配偶者あり | 4〜6万円 |
| iDeCo(月2.3万円)+生命保険+配偶者あり | 8〜12万円 |
還付金は通常12月の給与と一緒に振り込まれます(一部の会社は翌年1月)。明細に「年末調整還付額」として記載されているはずです。
よくあるミス・注意点
ミス1:保険料控除証明書をなくす
10月〜11月に各保険会社から郵送される「控除証明書」を紛失すると、控除が受けられません。電子化対応の保険会社ならマイページから再発行・電子データダウンロード可。紙でも再発行依頼すれば1〜2週間で届きます。
ミス2:iDeCoの掛金証明書を保険欄に書いてしまう
iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」という独立した枠です。生命保険料の枠と混同しないこと。証明書には「小規模企業共済等掛金払込証明書」と記載されています。
ミス3:配偶者の収入を見込みで書く
配偶者控除は年末時点の確定見込みで判断します。パートで働く配偶者が「12月までに103万円を超えそう」なら控除対象外です。あとから修正申告が必要になるとペナルティの可能性もあるため、慎重に。
ミス4:医療費控除を年末調整で申告しようとする
医療費控除・寄附金控除(ふるさと納税を含む)は年末調整では処理できません。確定申告で別途申告します。ただし、ふるさと納税はワンストップ特例制度を使えば確定申告不要(5自治体以内・申請期限1月10日)。
年末調整できない控除の確定申告
以下の控除は年末調整では処理できないため、確定申告で対応します。会社員でも該当する場合は2〜3月に申告が必要です。
- 医療費控除(年10万円超 または 所得5%超)
- 寄附金控除(ふるさと納税6自治体以上、認定NPO等)
- 住宅ローン控除の1年目(2年目以降は年末調整で可)
- 雑損控除(災害・盗難など)
- セルフメディケーション税制(特定の市販薬を年1.2万円超購入)
- 株式・投資信託の譲渡損益通算(特定口座源泉あり以外)
整理すると、こういうことだった
- 年末調整は「源泉徴収で多めに引かれた所得税を取り戻す手続き」
- 提出書類は主に3種類(扶養控除等申告書/保険料控除申告書/基礎控除等申告書)
- 大学生世代の子(19〜22歳)は特定扶養親族=控除63万円と大きい
- 生命保険・地震保険・iDeCoは控除証明書を集めて記入
- 配偶者控除は配偶者の年収103万円・150万円・201万円が判断ライン
- 還付金は12月給与で振込(典型例で年5万円前後)
- 医療費控除・ふるさと納税6自治体以上は年末調整不可、確定申告で対応
あわせて読みたい
参考情報・公的機関リンク
本記事は以下の公的機関の公表資料を参考に作成しています。最新情報・最新の制度内容は各公式サイトでご確認ください。
-
国税庁「年末調整がよくわかるページ」
— 年末調整の制度・各種申告書の様式 -
国税庁「基礎控除」
— 基礎控除の金額・所得制限 -
国税庁「生命保険料控除」
— 生命保険料控除の枠と計算方法 -
国税庁「配偶者控除」
— 配偶者控除・配偶者特別控除の条件と金額 -
国税庁「扶養控除」
— 扶養親族の判定と控除額
よくある質問
Q. 年末調整とは何のため?
毎月の給与から概算で天引きされた所得税を、1年の正確な税額に精算する手続きです。各種控除を申告することで、払い過ぎた税金が還付されます。
Q. 年末調整で記入する書類は?
主に「扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」「基礎控除・配偶者控除等申告書」の3つです。生命保険料控除や配偶者控除などをここで申告します。
Q. 年末調整で控除し忘れたら?
確定申告で後から控除できます。医療費控除やふるさと納税(ワンストップ未利用)など、年末調整で対応できない控除も確定申告で申告します。


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