※本記事の数値・料率・制度内容は2026年9月時点の情報に基づきます。税制改正や料率改定により変動する可能性があるため、最新の数字は記事末尾の公的機関リンクからご確認ください。
まず結論:3行でわかる要点
- 令和8年度の改正で基礎控除・給与所得控除・扶養親族等の所得要件がさらに引き上げられた
- この改正は11月までの毎月の源泉徴収に入っていない。12月の年末調整でまとめて精算される
- 大学生年代の子がいる家庭は新しい申告書が1枚増えた。書かないと控除されない
年末調整は会社員の人なら毎年経験するイベントですが、書類が複雑で「なぜこれを書くのか」がわかりにくい手続きです。この記事では、年末調整の基本的な仕組みから、各書類(扶養控除等申告書・保険料控除申告書・基礎控除申告書)の書き方、よくある記入ミスまでを順に整理します。
そもそも年末調整って何のためにある?
給与から毎月引かれている所得税は、「年収がこれくらいになる見込み」という仮の計算で源泉徴収されています。実際の年収・控除額は12月末にならないと確定しないため、確定した時点で「正しい税額」との差額を精算する手続きが年末調整です。
| 月々の源泉徴収 | 年末調整での精算 |
|---|---|
| 「源泉徴収税額表」に基づく概算 | 実際の年収・控除をもとに正しい税額を計算 |
| 配偶者控除・扶養控除は概算 | 最新の家族構成・収入で再計算 |
| 保険料・住宅ローン控除は反映されない | これらを差し引いて再計算 |
多くの人は、控除を申告することで源泉徴収より税額が小さくなり、差額が12月の給与で還付されます。逆に賞与や副業で予想より所得が増えた場合は、追加徴収になることもあります。
2026年(令和8年分)の年末調整で変わったこと
令和8年度の税制改正で、年末調整に直接ひびく変更が3つ入りました。令和7年度に続く2年連続の引き上げで、いま出回っている「58万円」「123万円」といった数字は令和7年分のものです。書き方の前に、ここを押さえておくと迷いません。
| 変わったもの | 中身 |
|---|---|
| 基礎控除 | 令和7年分は58万〜95万円 → 令和8年分は所得に応じて62万〜104万円(本則62万円+特例の上乗せ) |
| 給与所得控除 | 最低保障額が65万円 → 74万円に引き上げ(令和8・9年分) |
| 特定親族特別控除 | 令和7年分に新設。令和8年分は対象の子の年収が136万円超197万円以下へ広がった。申告書が1枚増えた |
還付が出やすくなっている理由
ここは知っておく価値があります。国税庁の資料には、こう書かれています。
令和8年11月までの給与等の源泉徴収事務に変更は生じません。令和8年分の給与等の源泉徴収事務においては、令和8年12月に行う年末調整の際に、(中略)引上げ後の基礎控除額(中略)に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」より(読みやすさのため一部を省略)
つまり11月までに給与から引かれてきた所得税は、改正前の税額表で計算されたままです。12月の年末調整ではじめて、引き上げ後の基礎控除で1年分を計算し直して精算されます。
その分、2026年の年末調整は例年より還付が出やすいことになります。書類を出さないと精算そのものが起きないので、面倒がらずに出しておきましょう。
年末調整で記入する3つの主要書類
2026年現在、会社員が提出する書類は主に以下の3つです。3枚目には、新しく特定親族特別控除の欄が加わりました。
| 書類名(略称) | 主な役割 |
|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書(マル扶) | 配偶者・子・親など扶養家族の情報を申告 |
| 保険料控除申告書(マル保) | 生命保険・地震保険・小規模企業共済等の控除を申告 |
| 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(マル基・配・所) | 本人の所得・配偶者の所得・所得金額調整控除を申告 |
住宅ローン控除を受ける場合は、これらに加えて「住宅借入金等特別控除申告書」を提出します(1年目は確定申告が必要、2年目以降は年末調整で完結)。
書類1:扶養控除等(異動)申告書の書き方
はい、扶養家族がいなくても提出は必要です。この書類は「翌年の源泉徴収税額」を決めるため、毎年必ず会社に提出します。
記入する主な項目
| 項目 | 記入内容・注意点 |
|---|---|
| 本人情報 | 氏名・住所・マイナンバー・生年月日(マイナンバーは2回目以降省略可) |
| 源泉控除対象配偶者 | 本人の年収900万円以下&配偶者の年収169万円以下の場合に記入 |
| 控除対象扶養親族 | 16歳以上の扶養家族(子・親など)。年齢区分で控除額が変わる |
| 障害者・寡婦・ひとり親 | 該当する場合チェック。所定の控除が追加される |
| 16歳未満の扶養親族 | 所得税の控除対象外だが、住民税の非課税判定に影響するため記入 |
扶養親族の年齢区分と控除額(所得税)
| 区分 | 年齢 | 控除額 |
|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 16歳〜18歳・23歳〜69歳 | 38万円 |
| 特定扶養親族 | 19歳〜22歳(大学生世代) | 63万円 |
| 老人扶養親族(同居) | 70歳以上(同居の親など) | 58万円 |
| 老人扶養親族(同居以外) | 70歳以上(別居の親など) | 48万円 |
大学生の子どもを扶養している場合、63万円控除と通常より大きく控除されます。所得税率20%の人なら12.6万円の節税に。
書類2:保険料控除申告書の書き方
保険料控除申告書は、生命保険料・地震保険料・社会保険料(給与天引き分以外)・小規模企業共済等掛金を申告する書類です。保険会社から届く「控除証明書」を見ながら記入します。
生命保険料控除の3つの枠
2012年以降の契約(新制度)
- 一般生命保険料(死亡保険など):年間8万円超で最大40,000円控除
- 介護医療保険料:年間8万円超で最大40,000円控除
- 個人年金保険料:年間8万円超で最大40,000円控除
3枠合計の上限:所得税で12万円、住民税で7万円
※2026年分(所得税)限定で、23歳未満の扶養親族がいる世帯は一般生命保険料枠が4万円→6万円に拡大。ただし3枠合計の上限は12万円のままです。使い切り戦略はこちら
地震保険料控除
地震保険は火災保険と別管理です。地震保険料は全額が控除対象(所得税で最大50,000円、住民税で最大25,000円)。火災保険のみの契約には控除がありません。
記入時の注意
- 控除証明書の数字をそのまま転記する(自分で計算しない)
- 古い保険(2011年以前契約)は「旧制度」の欄に記入。新旧で計算式が違う
- 学資保険は「一般生命保険料」の枠に入る
- iDeCoは「小規模企業共済等掛金」の枠(独立した控除枠で、全額所得控除)
書類3:基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除申告書
この書類は名前が長いですが、3つの控除を1枚にまとめたものです。
基礎控除申告書
基礎控除は令和7年度・令和8年度の2年連続の改正で大きく変わりました。以前の一律48万円ではありません。令和8年分は本則が62万円に上がったうえで特例の上乗せがあり、合計所得金額に応じて62万円から104万円までの3段階になっています。
記入する金額は「給与所得控除後の所得金額」。給与額面ではなく、源泉徴収票に書かれている所得額です。
| 給与所得(控除後) | 基礎控除額 |
|---|---|
| 489万円以下 (給与だけなら収入665万5,556円以下) |
104万円 |
| 489万円超〜655万円以下 (同 850万円以下) |
67万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 (同 2,545万円以下) |
62万円 |
※上の表は令和8年分・令和9年分の額です。本則62万円に42万円・5万円を加算する特例が含まれており、この特例は居住者にのみ適用されます。令和10年分以後は132万円以下が99万円、それ以外は62万円に戻ります。合計所得金額2,350万円超の場合の額に改正はありません(従来どおり段階的に減り、2,500万円超はゼロ)。
参考:令和7年分は58万円・63万円・68万円・88万円・95万円の5段階でした。ネット上にはこの令和7年分の数字がまだ多く残っています。
ここが今回いちばん大きい変更です。年収500万円の会社員なら、給与所得控除144万円を引いた合計所得は356万円。489万円以下なので基礎控除は104万円です。改正前の48万円から56万円増えたことになります。控除が増えれば課税される所得が減るので、その分だけ税金が軽くなります。
基礎控除の仕組みそのものは基礎控除の仕組み完全解説で整理しています。
特定親族特別控除(令和7年分から新設)
大学生年代の子がいる家庭に関わる、新しい控除です。該当する人は申告書を1枚多く書くことになります。
これまで、19歳以上23歳未満の子は「特定扶養親族」として63万円の控除がありました。ただし子のアルバイト収入が一定を超えると、この控除がまるごと消えていました。そこを段階的にしたのが特定親族特別控除です。
特定親族の要件(国税庁)
・居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人、白色事業専従者を除く)
・合計所得金額が62万円超123万円以下(収入が給与だけなら、収入金額が136万円超197万円以下。令和8年分の額です)
・里子(児童福祉法により養育を委託された児童)も含む
・控除対象扶養親族に該当しないこと
控除額は、子の合計所得金額に応じて9段階です。
| 子の合計所得金額 (給与だけならこの年収) |
控除額 |
|---|---|
| 62万円超85万円以下 (136万円超159万円以下) |
63万円 |
| 85万円超90万円以下 (159万円超164万円以下) |
61万円 |
| 90万円超95万円以下 (164万円超169万円以下) |
51万円 |
| 95万円超100万円以下 (169万円超174万円以下) |
41万円 |
| 100万円超105万円以下 (174万円超179万円以下) |
31万円 |
| 105万円超110万円以下 (179万円超184万円以下) |
21万円 |
| 110万円超115万円以下 (184万円超189万円以下) |
11万円 |
| 115万円超120万円以下 (189万円超194万円以下) |
6万円 |
| 120万円超123万円以下 (194万円超197万円以下) |
3万円 |
子のアルバイト代がいくらだったかを、親が把握していないと書けません。12月の書類提出までに確認しておきましょう。年をまたぐ前に、子に源泉徴収票か給与明細を見せてもらうのが確実です。
なお子の収入が給与だけで136万円以下(合計所得62万円以下)なら、これまでどおり特定扶養親族として63万円の扶養控除が使えます。令和7年分の123万円から上がっているので、去年ぎりぎり外れた家庭は今年もう一度確認する価値があります。特定親族特別控除は、そこを超えたときの受け皿です。
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者の所得と本人の所得によって、控除額が3段階に分かれます。かつて「年収103万円・150万円の壁」と呼ばれていましたが、2025年・2026年の連続改正で引き上げられ、2026年は配偶者控除が年収136万円以下、配偶者特別控除の満額が169万円以下になりました(くわしくは配偶者控除の完全ガイド)。
| 配偶者の年収(給与のみ) | 本人所得900万円以下の控除額 |
|---|---|
| 136万円以下 | 38万円(配偶者控除) |
| 136万円超〜169万円以下 | 38万円(配偶者特別控除) |
| 169万円超〜207万円以下 | 段階的に減額(38→3万円) |
| 207万円超 | 控除なし |
還付金はどう計算される?
還付金の目安
| 想定ケース | 年末調整での還付目安 |
|---|---|
| 独身・控除なし | 数百円〜数千円 |
| 配偶者あり(136万以下) | 2〜4万円 |
| 生命保険3枠フル活用+配偶者あり | 4〜6万円 |
| iDeCo(月2.3万円)+生命保険+配偶者あり | 8〜12万円 |
還付金は通常12月の給与と一緒に振り込まれます(一部の会社は翌年1月)。明細に「年末調整還付額」として記載されているはずです。
よくあるミス・注意点
ミス1:保険料控除証明書をなくす
10月〜11月に各保険会社から郵送される「控除証明書」を紛失すると、控除が受けられません。電子化対応の保険会社ならマイページから再発行・電子データダウンロード可。紙でも再発行依頼すれば1〜2週間で届きます。
ミス2:iDeCoの掛金証明書を保険欄に書いてしまう
iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」という独立した枠です。生命保険料の枠と混同しないこと。証明書には「小規模企業共済等掛金払込証明書」と記載されています。
ミス3:配偶者の収入を見込みで書く
配偶者控除は年末時点の確定見込みで判断します。パートで働く配偶者が「12月までに136万円を超えそう」なら配偶者控除の対象外になり、配偶者特別控除に切り替わります(169万円までは同じ38万円が使えます)。あとから修正申告が必要になるとペナルティの可能性もあるため、慎重に。
ミス4:医療費控除を年末調整で申告しようとする
医療費控除・寄附金控除(ふるさと納税を含む)は年末調整では処理できません。確定申告で別途申告します。ただし、ふるさと納税はワンストップ特例制度を使えば確定申告不要(5自治体以内・申請期限1月10日)。
年末調整できない控除の確定申告
以下の控除は年末調整では処理できないため、確定申告で対応します。会社員でも該当する場合は2〜3月に申告が必要です。
- 医療費控除(年10万円超 または 所得5%超)
- 寄附金控除(ふるさと納税6自治体以上、認定NPO等)
- 住宅ローン控除の1年目(2年目以降は年末調整で可)
- 雑損控除(災害・盗難など)
- セルフメディケーション税制(特定の市販薬を年1.2万円超購入)
- 株式・投資信託の譲渡損益通算(特定口座源泉あり以外)
整理すると、こういうことだった
- 年末調整は「源泉徴収で多めに引かれた所得税を取り戻す手続き」
- 提出書類は主に3種類(扶養控除等申告書/保険料控除申告書/基礎控除等申告書)。3枚目に特定親族特別控除の欄が加わった
- 基礎控除は48万円ではなく、令和8年分は所得に応じて62万〜104万円(合計所得489万円以下なら104万円)
- 令和8年度の改正は11月までの源泉徴収に入っていない。12月の年末調整で精算されるので還付が出やすい
- 19〜22歳の子のアルバイト代が多かった家庭は、特定親族特別控除(3万〜63万円)を確認する
- 大学生世代の子(19〜22歳)は特定扶養親族=控除63万円と大きい
- 生命保険・地震保険・iDeCoは控除証明書を集めて記入
- 配偶者控除・配偶者特別控除は配偶者の年収136万円・169万円・207万円が判断ライン(2026年)
- 還付金は12月給与で振込(典型例で年5万円前後)
- 医療費控除・ふるさと納税6自治体以上は年末調整不可、確定申告で対応
あわせて読みたい
参考情報・公的機関リンク
本記事は以下の公的機関の公表資料を参考に作成しています。最新情報・最新の制度内容は各公式サイトでご確認ください。
-
国税庁「年末調整がよくわかるページ」
— 年末調整の制度・各種申告書の様式 -
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」(PDF)
— 令和8年分の基礎控除額(62万〜104万円)、給与所得控除の最低保障額74万円、扶養親族等の所得要件、令和8年12月の年末調整で精算すること -
国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
— 改正の全体像と申告書の様式変更 -
国税庁「令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A」(PDF)
— 前年(令和7年分)の改正内容 -
国税庁「No.1177 特定親族特別控除」
— 特定親族の要件と控除額の9段階(金額の年分は上記あらましで確認) -
国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
— 改正の全体像 -
国税庁「基礎控除」
— 基礎控除の金額・所得制限 -
国税庁「生命保険料控除」
— 生命保険料控除の枠と計算方法 -
国税庁「配偶者控除」
— 配偶者控除・配偶者特別控除の条件と金額 -
国税庁「扶養控除」
— 扶養親族の判定と控除額
よくある質問
Q. 年末調整とは何のため?
毎月の給与から概算で天引きされた所得税を、1年の正確な税額に精算する手続きです。各種控除を申告することで、払い過ぎた税金が還付されます。
Q. 年末調整で記入する書類は?
主に「扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」「基礎控除・配偶者控除等申告書」の3つです。生命保険料控除や配偶者控除などをここで申告します。
Q. 年末調整で控除し忘れたら?
確定申告で後から控除できます。医療費控除やふるさと納税(ワンストップ未利用)など、年末調整で対応できない控除も確定申告で申告します。


